BIMのその先を目指して

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BIMのその先を目指して・78/樋口一希/NTTデータとIPD・上  [2018年11月29日]

BIMチーム(分科会)の構成

 建築主・オーナーであるNTTデータと専門工事業者としてプロジェクトに深く協働した新菱冷熱工業への取材を通してわが国初ともいえる実質的なIPD(Integrated Project Delivery)の現容を報告する。

 □建築主のイニシアチブでIPDを主導+BIM採用の認知を進めノウハウ提供のキーマン存在□

 IPDは米国の建設業界に出自をもつビジネスモデルで建築主(発注者)、設計者、元請(建設会社)、協力会社などが建築の上流から下流まで協働することでプロセスを最適化する協業形態だ。IPDの成立には全行程をデジタルによってリアルタイムで見える化し、情報共有できるBIMの採用が不可欠である。
 BIM採用とともに、協業形態としてのIPDを成立させる最も重要な要諦は、実利的、現実的にも金主である建築主がIPDを採用する目的を明確にし、イニシアティブを発揮して主導することだ。
 NTTデータがIPDを主導するに至った背景には明確な必然性と幸運ともいえる蓋然(がいぜん)性があった。必然性の根拠はプロジェクト対象が最先端のデータセンター建設であったことに求められる。蓋然性は建築主としてNTTデータの側にBIM採用の社内認知を推進するキーマンが存在したことであり、専門業者の新菱冷熱工業の側にもBIM運用の自社ノウハウをもって協働するキーマンが存在したことだ。

 □竣工後も継続工事が発生し設備比率が高い建設特性のため使いやすさ確保のBIM採用が必須□

 デジタル社会の根幹をなすクラウドサービスとデータセンターの需要は増大している。アマゾンは通販最大手であるとともに、クラウドサービスの覇者ともなりつつある。NTTデータには、彼らとの激烈な競争を勝ち抜くために、クラウドベースとして最新スペックのデータセンター建設が求められている。
 18年3月竣工のデータセンターは、S造4階+PH:免震構造+増設時延べ床面積3万7650平方メートルでクラウド時代のアウトソーシング拠点としての最新スペックが採用されている。プロジェクト発動に際しては建築主から「『建設(性能)要件=スペック』と『運営・維持管理の課題』を設計段階から共有し、施工前に最適化しておく必要がある」(佐々木淳・NTTデータ ビジネスソリューション事業本部ファシリティマネジメント事業部PM推進担当部長)とのIPD採用への明確な意思表示がなされた。
 「建設(性能)要件=スペック」に関してはデータセンターの施設特性への留意が求められた。クラウド市場での競争に打ち勝つためには変化に応じて最新システムへの更新を行う必要があり、竣工後も継続的に工事が発生する。設備比率が高くなるため保守運用の業務量が多くなりLCC(ライフ・サイクル・コスト)が大きくなる傾向がある。竣工後の運用要件(使い勝手の良さ)を担保するためには、BIMでの建物情報のデジタル化による見える化+共有が最大限、効果を発揮する。

 □BIM分科会で「BIM実施計画」策定+デジタルの優位性を生かすため異なる組織を水平展開□

 建築主のBIMを採用するという明確な意思に基づき、プロジェクトがスタートしてまず最初にIPDを構成する関係者によるBIM分科会を設立して「BIM実施計画(BIM Enforcement Planning)」を策定、ルールブックとして明文化している。そこにはBIMの目的、援用範囲、LOD、モデル作成規約、入力するデータ項目などが明記されており、プロジェクト進行とともに内容の評価+改定を実施し関係者間で共有、運営された。プロジェクトの初期から運用されたIPD体制は施工段階でのBIMの実行計画+実施へと引き継がれ、最終段階でのVHO(Virtual Handover:バーチャル・ハンドオーバー=仮想引き渡し)へと至る。
 「壁を作らずに組織の間も超えていくBIMによるデジタル情報の優位性を生かすために、建築主が主導して異なる組織を対等に水平展開してくれたのでBIM運用ノウハウを最大限に持ち込みコラボレーションできた」(谷内秀敬・新菱冷熱工業技術統括本部BIMセンター専任課長)。
 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)

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