支える-ゼネコン協力会のかたち・上/処遇改善とイメージ戦略展開

2019年12月25日 トップニュース

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 ◇関係深化し担い手確保へ
 建設産業が喫緊の課題に挙げる担い手の確保は、ゼネコン各社の施工力を支える協力会社でより深刻化している。官民挙げて処遇改善に力を注ぐ一方、重層下請や日給月給制など旧態依然とした構造的な課題もあり、変革は道半ばの状況。多様な職種から成り立つ労働集約型の建設産業にとって、人材の安定確保なくして持続的発展はあり得ない。これまで以上に絆を強めようと、ゼネコン側も協力会社組織の再構築に本腰を入れだしている。
 建設産業で働く技術者・技能者の高齢化は急速に進んでいる。特に専門工事業では70歳前後の団塊の世代が現場を下支えしている職種も少なくない。大手ゼネコンの幹部は「5年後に団塊の世代が抜けた穴をどう補填するかが喫緊の課題であり、協力会社らによる成り行き任せの対応では施工力を維持できない」と不安を隠さない。
 これまでもゼネコン各社は協力会の会員企業らと協力・連携しながら担い手の確保に注力してきた。学生向けのパンフレットや各工種のDVDなど、リクルート用ツールを製作・提供。工業高校向けの現場見学会などを開き、ものづくりの魅力を伝える取り組みも積極展開している。
 業界を挙げて人材を呼び込む活動を展開するものの、職人を志す若い世代の入職者は低調が続く。
 中堅ゼネコンの協力会会長は「工業高校の生徒も大半がゼネコン志望で、地場の専門工事業者は見向きもされない。最近は普通高校にも出向き、会社は自宅に近く、転勤がないこともアピールしているが、採用活動は厳しい状況だ」と話す。
 働き方改革は建設業への入職を促すために取り組むべき重要課題の一つ。準大手ゼネコンの安全衛生協力会の幹部は「会議でも安全以外のテーマが大半を占めるようになった。休暇取得や現場閉所など、実際の労働に直結しない部分の対応などで荷が重くなってきた」と感じている。
 就職先の選択には、生徒本人より学校の先生や親側の影響も小さくない。大手ゼネコンの協力会幹部は「建設業に対する社会一般のイメージは決して改善したとは言いがたい。休みや給料も大切かもしれないが、作業員が『かっこいい』というイメージアップの戦略に知恵やカネをもっと使うべきだ」と胸の内を明かす。
 元請側のゼネコン自体のブランド力を高めることにより、その協力会傘下の会員企業のイメージアップに間接的につながることが期待される。社会貢献活動のほか、最近は宇宙やIT産業など成長分野の異業種との協業により、事業領域の拡大と社会的な認知度向上に取り組む動きも目立ってきた。
 建設キャリアアップシステム(CCUS)など技能者の地位向上に関わる施策も動きだした。業界のマイナスイメージを拭い去るため、ゼネコンと協力会は関係をさらに深化していく。