JAPICの緊急提言から・4/各種計画をどう連携させるか

2021年3月22日 トップニュース

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 ◇自治体の枠を越えた流域防災計画の作成を

 気候変動による水害の激甚化、頻発化を受け、これまでの水害対策をより一層強化するため、洪水貯留施設・堤防などのハード整備の加速化や治水計画の見直しなどが行われている。さらに、河川の流域全体を俯瞰(ふかん)して、行政、民間、地域、個人が協働する総力戦による流域治水の取り組みも始まっている。

 2月初旬に国会へ提出された「流域治水関連法案」は公物管理が主となる河川法・下水道法のみならず、ソフト対策として不可欠な水防法や街づくりの基盤を創る都市計画法など関連する9本の法律が一体となって改正される。施策は多岐にわたり、これまでの流域治水の施策を法的に後押しする。

 具体的には防災・減災で重要な役割を果たす「事前予防による被害軽減」「発災時のハード・ソフトの応急対応による被害抑制」「被災後の迅速な復旧復興」の三つの断面の視点から、まち空間を含めた流域全域を対象として、あらゆる施設や活動を水害対策に関連付けることに力点が置かれている。どれも今すぐ取り組まなければならない課題で、早期の法案成立と確実な施行が望まれる。

 なかでも流域水害対策計画(特定都市河川浸水被害対策法)作成に当たり、国、都道府県、市町村、学識者などによって組織される法定協議会の設置が義務付けられたことの意義は大きい。水を巡る利害関係者が一堂に集まり、計画検討段階から体制を築くことは注目に値する。法定協議会が一部の河川流域にとどまることなく、効果を発揮して全河川流域へ拡大展開していくことが望まれる。その際、社会経済活動を担う社会単位ごと(個人、地域コミュニティー、企業、行政単位、行政機関など)の被災リスクを明確にした上で、被害軽減に向けて自らやるべきこと、連携してやるべきこと、これらをトータルとしてやることなど全体をマネジメントできる仕組み作りが重要になるだろう。

 災害対策は命を守る避難行動、インフラの早期復旧、災害廃棄物処理、エネルギー供給、物流などのサプライチェーン強化など、社会活動全体のあらゆる視点からアプローチしていく必要がある。一部の行政官庁だけで対応できることではない。

 防災・減災に関する計画は、災害対策基本法による地域防災計画や、住民・事業者等が自発的な防災活動計画を策定する地区防災計画、地域BCP(事業継続計画)的な国土強靱化基本法による地域計画などがあるものの、いずれも地方自治体単位で作成されている。一方、河川法の河川整備計画は流域単位で河川管理者の国や都道府県が作成している。

 このためハードとソフトの整備、運用や災害時の応急対応などは分業的色合いが強く、双方がマッチして迅速かつ確実な活動とするにはもう一工夫が必要な場面も出てくる。これらを連携させるには自治体の枠を越えて、例えば水害全般を対象にした「流域・地域減災計画(仮称)」を策定し、地域全体で治水機能やその実効性を担保する計画の作成が有効となる。加えて、災害発生時に備えた行動計画であるコミュニティー・タイムラインやマイ・タイムラインなどを包括した計画作りも、実行性を高めていく上で有用となる。

 防災・減災に係る各種計画の連携や一体化とともに、実効性の高い体制づくりは表裏一体だ。自助・共助・公助を適切に組み合わせた総力戦により、人命を守り、経済社会の壊滅的な被害を防いで迅速に回復させ、地域の持続的な成長、地方創生などへの波及も視野に入れ、災害に負けない地域づくりへつなげていくことが何よりも重要なはずだ。