練馬城址公園整備・中/としまえん閉園後も、西武線沿線のにぎわいを

2021年6月10日 トップニュース

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 練馬城址公園の整備計画の具体化に伴い、としまえんは昨年8月に惜しまれつつも閉園、94年の歴史に幕を閉じた。スタジオツアー施設や公園の整備検討が進行する中、としまえん跡地を所有する西武鉄道は「鉄道沿線のさらなるにぎわいを生み出すことができるよう、都など関係者と連携して価値向上に取り組んでいく」(後藤高志会長)姿勢を示す。
 としまえんは当時の財界人・藤田好三郎が所有していた土地を、運動と園芸を市民に奨励するために公開したのに端を発する。1926年9月に一部が開園し、27年4月に全面開園した。自然公園や遊戯施設に加え、音楽堂や劇場、スポーツ施設などを備えた複合レジャーとして営業を始めた。
 94年間一貫して、「何を作れば顧客に喜んでもらえるのか」「どのくらいの規模のものを作れば長時間並ばずに利用できるのか」をコンセプトに据え、サービスを拡大してきた。51年に日本初のモノレール「空飛ぶ電車」を導入。インドアスキー場(58年)、流れるプール(65年)といずれも世界初となるアトラクションも開設し、他にはない独自な世界観が注目を集めた。92年度には来場者数がピークとなる約391万人を記録した。
 都から「公園の事業化に速やかに着手し、計画的に整備を進めたい」と打診があったのは昨年1月。としまえんが都の避難場所に指定を受けていたことから、「今後も地域の緊急災害時の安全安心を提供する」との思いがあり、協力を決めたという。
 同6月には西武鉄道と都、区、ワーナーブラザースジャパン、伊藤忠商事の5者が覚書を締結した。練馬城址公園の開園に向けた協力に加え、段階的な公園整備に合わせて、約9ヘクタールの敷地でスタジオツアー施設を整備するため協議することを盛り込んだ。
 伊藤忠商事が建設するスタジオツアー施設の名称は「ワーナー ブラザース スタジオツアー東京-メイキング・オブ ハリー・ポッター」。「ハリー・ポッター」や「ファンタスティック・ビースト」シリーズのセットなどを展示し、映画の舞台裏を楽しめる。延べ約3万平方メートルの広さの施設は大成建設の施工で5月に本体着工を迎えた。2023年前半にオープン予定だ。
 ワーナー・ブラザースが、ロンドンに次ぐ日本でのスタジオツアー展開を伊藤忠商事に相談。同社が西武鉄道との事業を提案したことで整備が実現した。着工に当たり後藤会長は「練馬城址公園とともに、新たなにぎわいと文化発信の拠点となり、アフターコロナの象徴的な場所になることを確信している」と期待を寄せた。西武鉄道は近接する豊島園駅の改修などを実施することで、スタジオツアーや練馬城址公園の整備事業を後押しする考えだ。