風をつかむ-識者の視点・9/秋田県・佐竹敬久知事/地域と長期の共生不可欠

2021年7月13日 トップニュース

文字サイズ

 商社や電力会社など多くの企業が洋上風力発電事業の実現を目指している秋田県沖。背景には太平洋側に比べ台風災害のリスクが低く、年間を通じて安定した風が吹く恵まれた自然条件がある。秋田県の佐竹敬久知事は洋上風力発電を柱とする新たな地域振興に意欲を見せる。
 --洋上風力発電の可能性をどう見る。
 「秋田では沿岸部を中心に風力発電が導入されており、2月末時点の実績で風車313基、出力約64万8000キロワットに上る。洋上風力発電は陸上に比べ発電規模が大きい。秋田は国内でも洋上風力発電に適した風況に恵まれ、太平洋側に比べると台風の直撃もほとんどない。こうしたことから本県沖の複数の海域で導入に向けた動きがある」。
 「昨年12月には国の『洋上風力産業ビジョン』で2040年に最大4500万キロワットの案件形成を目指す目標が掲げられた。現在、秋田の海域で進められている洋上風力発電事業は浅い海域の着床式だが、国は目標達成に向け深い海域での浮体式設備の技術開発などを行うことにしている。今後、こうした国の動きを注視しながら浮体式も含めた洋上風力発電区域の拡大について課題整理し、その方向性を検討していく」。
 --地域振興という視点から見た期待や課題は。
 「洋上風力発電は事業規模が大きく、運転期間も20年と長期間に及ぶ。この期間を地域振興にどう生かすかが、今後の県の最重要課題だ。建設やメンテナンスといった分野に県内企業が参入し、地域の経済や雇用に効果が生まれることに大きく期待する。高校への出前講座や大学での講座開設支援をはじめとして人材育成にも注力していきたい」
 「国内全般に着目すると、洋上風力発電事業は東北から北海道の日本海側を中心に進んでいる。昨年9月には秋田港(秋田市)と能代港(能代市)が洋上風力発電の基地港湾として国に指定された。両港が秋田にとどまらず、北日本全体の洋上風力発電事業で部材の積み出しや維持管理作業の拠点港湾としての役割を担うことにも期待している」
 --再生可能エネルギー全般の普及はどう考える。
 「再生可能エネルギーの導入量で、秋田県は風力が全国1位、地熱も2位となっている。今後も一般海域を含めた洋上風力発電の早期事業化や、これまで開発が規制されていた自然公園内での地熱発電の事業化促進など、国内最大級の再生可能エネルギーの供給基地になることを目指す」
 --国や発電事業者などに期待することは。
 「洋上風力発電事業は地域と長期間にわたり共生していくことが大事と考えている。部品や資機材の製造、施工、据え付け、メンテナンスといった取り組みでの県内事業者の参画に期待している。県としては発電事業者やメーカー、建設業者などとの情報交換や、県内企業とのマッチングなどに取り組んでいく。国に対しては事業者の選定に当たり、地域貢献に資する取り組みの提案を重視してほしい」。