風をつかむ-識者の視点・10/オーステッド・ジャパン・笠松純社長

2021年7月14日 トップニュース

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 ◇日本版ビジネスモデルを構築
 デンマークに拠点を置くオーステッドは世界最大手の洋上風力発電事業会社。潜在需要が期待できる日本市場への参入を目指し、2019年5月に「オーステッド・ジャパン」を設立した。欧州などで30年以上にわたって積み重ねた経験と実績を武器に、笠松純社長は「国内で洋上風力のリーディングプレーヤーになることがミッション」と力を込める。
 --日本市場をどう見る。
 「非常に魅力的な市場だ。日本では40年に最大45ギガワットの案件形成を目指す目標が掲げられている。ゼロからのスタートを考えると非常に大きな数値目標だ。現在、われわれが関わる27カ所の洋上風力発電所(発電容量約7・6ギガワット)が世界で稼働している。建設中を入れると約10ギガワットに上り、このほか開発中の案件を含めると倍以上の規模になる。日本と気象・海象条件が類似し、地震区域でもある台湾での実績があることも強みだ。技術面で特に懸念する要素はない。30年以上の経験と実績が生かせるはずだ」
 「風車は大型化の傾向にあり、商業レベルで実績のない日本に最新技術をいきなり導入するのはリスクもある。確実に実現可能な安全で安定した運用を第一に考えなければならない。欧州では開発から設計、建設、運用、撤去まで全工程をカバーするビジネスモデルを提供している。一から産業をつくる日本では行政を含め、多くのプレーヤーとの連携が大切だ。パートナーの選定は地域性が一つの要素になる。30年スパンの事業展開を見据えた場合、地元との共生は欠かせない。ただ多くのパートナーと組むことで効率性が落ちる面もあり、戦略的な検討が必要だろう」
 --国内初の事業者公募に名乗りを上げた。
 「東京電力リニューアブルパワーと設立した『銚子洋上ウインドファーム』を通じ、千葉県銚子沖の公募に参加した。秋田県沖はパートナーシップを結んだ日本風力開発、ユーラスエナジーホールディングス(HD)と参加している。今後の流れを作る非常に重要な案件だ。初弾の成果を踏まえ、選定手続きなど制度関係もより良い形に進化していくだろう」
 「低コスト化も求められているが、まだ実績もない純国産の発電所建設では難しい面がある。国内のサプライチェーン(供給網)にも影響が出るだろう。今回のミッションは単純に価格低減ではなく、継続的な国内産業の創出やサプライチェーン形成がポイントと考えている。まずは基盤を構築し段階的に健康的な状況を整えていく必要がある。企業、人材の育成も重要だ」
 --今後の展望は。
 「技術の進展やイノベーションは確実に起こる。そこに豊富な経験やノウハウを生かし、日本版のビジネスモデルを構築したい。今後の公募にも積極的に対応していく。着床式では限界があり、浮体式にもスピード感を持って取り組み5年、10年以内に実績を上げたい。目標は洋上風力のリーディングプレーヤーの1社になることだ。そのために力を尽くしたい」。