風をつかむ-市場展望・1/大型化対応、最適解で協調を/国内メーカーの頑張り期待

2021年7月26日 トップニュース

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 洋上風力発電事業で先行する欧州では、コスト競争力の観点から風車の大型化の流れが一段と強まっている。関連産業やインフラなど事業基盤が脆弱(ぜいじゃく)な日本市場では、一足飛びの大型化を懸念する声も少なくない。幅広い分野の関係者が事業の最適解で協調できるかどうかが、洋上風力の普及拡大への鍵を握ることになりそうだ。(編集部・洋上風力発電取材班)
 洋上風力の風車の規模は現在、発電出力12メガワットクラスが開発され、高さは約250メートルに達する。既に14メガワットクラスの開発も進んでおり、関連業界では2030年までに15メガワットから20メガワットの開発を見据えている。
 東芝と洋上風力分野で提携した米ゼネラル・エレクトリック(GE)は今春、大型の洋上風力タービン「Haliade-X」(出力12~13メガワット)で初となる台風仕様の国際認証(クラスT)を取得。パリに本部を置くGEリニューアブルエナジーの大西英之日本代表は「コスト競争力の観点から風車の大型化は避けて通れず、この流れは続くだろう」と見通す。
 デンマークの風車メーカーであるヴェスタスと提携関係にある三菱重工業は国内工場の整備に向け、ヴェスタスへの保有資産の貸し出しや売却など、さまざまなシナリオを想定しながら検討を進める。三菱重工の関係者は「国内市場で風力発電設備の販売を当社、開発・製造はヴェスタスという役割分担が基本。工場の詳細は固まっていないが、事業予定の海域近くで作るのが運搬コストの面でも有利になり、市場動向を注視している」と話す。
 グローバル市場では大型化で風車1基当たりの発電量を増やして設置基数を減らし、事業性を高めるのが基本的な考え。事業者として国内市場に参入する日系企業の幹部は「15メガワットの風車が商品・実用化されてもなかなか対応が難しい。海外の風車メーカーには日本の現状を見て、10メガワットクラスを25年からその先までキープし、供給できるようにしてほしい」と訴える。
 日本の風車メーカーが存在しない現状では、海外メーカーの動きに合わせざるを得ないのが実情。同幹部は「関連インフラなどを日本国内で急速に整備・拡充しているが、大型化のスピードに追い付くのはかなり大変」と本音を漏らす。
 急速に進む大型化への対応で施工上のリスクを懸念する声も目立つ。日本埋立浚渫協会の清水琢三会長は「風車の大型化競争に巻き込まれることなく、安全・確実な施工で実績を積むことが現実的だ」と指摘する。
 業界関係者は「生産効率を考えれば、メーカー側は低出力から高出力まで幅広いラインアップをそろえるつもりはない。海外メーカー主導の大型化の流れが加速する中、国内メーカーの頑張りに期待したい」と語気を強める。
 未成熟な日本市場で最新の大型風車をいきなり導入するリスクは小さくない。特に導入初期は関係者らの対応力・適応力を見定めながら、安全・確実な案件形成で協調することが円滑な事業推進に求められる。