デジタルで建設をDXする・55/樋口一希/コンピュテーショナルデザインの最新刊

2022年4月14日 ニュース

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 『Dynamo+RevitではじめるコンピュテーショナルBIM』(石津優子著、ビー・エヌ・エヌ)が15日に刊行される。建築分野でのDXを推進するコンピュテーショナルデザインの現在を俯瞰する一冊として紹介する。

 □建築の新潮流のバックグラウンドにあるプログラミングやロボティクスとデザインの連動□
 著者の石津氏を知ったのは2017年10月27日開催のArchi Future 2017での講演「プログラミングを用いた設計手法・建築生産の可能性と未来」においてだった。
 同時期に、雑誌『WIRED』は、コンピュテーショナルデザインのメッカ、スイス連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)建築学科でのデジタルファブリケーション+アルゴリズミックデザイン、そしてプログラミングやロボティクスとデザインの連動に関する連載を行っていた。
 建築家は設計するだけでなく、最先端のデジタル技術を用いて建造物を製造する。石津氏は13年にETHZのMAS CAAD(Computer Aided Architectural Design)を修了しており、講演を通して建築分野における新しい潮流のバックグラウンドを知るに至った。石津氏は21年にGEL(Geometry Engineering Lab)を設立して代表取締役に就任し、iOSアプリやウェブアプリ、アドインプログラムの開発などに従事している。

 □初心者でもビジュアルプログラミングでコンピュテーショナルBIMの活用思考を身に付ける□
 本書はコンピュテーショナルBIMの入門から実践までを学ぶための解説書だ。BIMソフト「Autodesk Revit」のプラグインとしてビジュアルプログラミング環境を構築するDynamoを用いて、プログラミングの初心者でもビジュアルプログラミングを通してコンピュテーショナルな手法でBIMを活用する思考を身に付けることを目指している。
 基礎編と実践編から構成されており、基礎編では第1章でRevitのデータ構造とDynamoの仕組みを説明した上で、第2章から第6章までは実習形式で小さなコードを組み立て、つなげてRevitでDynamoを動かしていく。
 第7章から第12章の実践編では、基礎編での学びをベースにしてより実用的なレシピを紹介している。第7章「パラメトリックモデリング」ではDynamoでパラメトリックな建築モデルを作り、第8章「ランダム・イメージ」ではランダムやイメージを数値として利用し、間口サイズやパネルの色のパターンを作る。第9章「空間分析」では、室内・都市の可視域や最短距離経路といった空間分析や部屋の面積を算出し、図・グラフとして表示し、第10章「効率化」では、部屋の仕上げ情報から床を作り、天井や床に穴を開けるといった作業を自動化する。
 第11章「データ連携」では、OSMやAutoCADといったデータをRevitモデルへ連携しており、第12章「クオリティチェック」では、不要な要素を消去、反転している要素や非表示の要素を見つけ出すなどRevitモデルのクオリティチェックの例を紹介している。
 B5判420ページに及ぶ大著だが、Dynamoを初めて触る人が実際の業務で役に立つプログラムを自分で書けるようになる工夫が満載である。(定価・本体4400円+税)=写真。

 □BIMに象徴されるデジタルをもって現状を切り開いている少数派の女性たちにエールを贈る□
 3次元建物モデルと属性情報を自在に扱えるBIMのメリットは、平・立・断面図間の整合性チェックが不要な一点だけでも明白なのに、現状では2次元CADが主流でBIMは少数派だ。少数派への親和といえば男性中心社会の建設業の中で女性も少数派だ。
 スティーブ・ジョブズが初めてiPhoneを発表会で掲げた時、誰もがここまで世界を変えるとは思わなかった。今では難民でさえも、iPhoneを持って国境を超えていく。少数派が常に正しいとは限らないが、それでも現状を切り開く胎動は少数派から始まる。あえて女性がというガラスの天井がない社会の到来を願って、時宜を得てBIMに象徴されるデジタルをもって現状を切り開いていく女性たちを紹介していく。
 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)