デジタルで建設をDXする・62/樋口一希/SDGsとトイレを考察

2022年6月9日 ニュース

文字サイズ

 LIXILは、誰もが安心して快適に利用できるパブリックトイレを目指すウェブサイト「LIXILパブリックトイレラボ」と、公共エクステリア製品を対象としたバーチャル施工写真集「E-Real@site」をオープンした。

 □基本的人権の一つとして「トイレへのアクセス」を考察する□
 LIXILバブリックトイレラボは、全ての人にとって「トイレへのアクセス」は基本的人権のひとつであるとのメッセージを掲げており、それを受けて「トイレへのアクセスと人権を考える」「SDGs(持続可能な開発目標)とトイレ」をテーマとしたページを設けている。
 パブリックトイレの課題は、Goal6「安全な水とトイレを世界中に」(※)とも密接に関連している。世界では、発展途上国などにおいて安全で清潔なトイレがないことによって生存権が脅かされたり、通学できず、教育機会を奪われたりする人たちがいる。国内でもトイレへのアクセスが保障されないことで外出を諦める人や、学校や職場でトイレが利用できず生きづらさを抱える人もいる。
 パブリックトイレの領域でSDGsを達成することは、それらの諸課題を解決することにも直結する。
 (※)Goal6=全ての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する開発目標。6・1~6・6と6・a、6・bの八つのターゲットで構成。

 □マイノリティーのニーズに寄り添ったパブリックトイレを実現する□
 年齢・性別・身体状況にかかわらず、誰もが使いやすいパブリックトイレのあり方を追求、異性介助が必要な人や性別違和のある人など、男女別のトイレでは利用しづらいと感じている人々からのニーズが高い「男女共用で広めのトイレ」を提案している。車椅子ユーザーが安心して外出するために必要なトイレの広さや設備、推奨プランも紹介。オフィスや学校、商業施設などの建築用途別に、利用者のニーズに合わせたパブリックトイレづくりのポイントを考察している。「建築・設計関連コラム」「施工事例」「カタログ情報」「調査レポート」などの情報も提供する。

 □施工例を臨場感あふれる360度のバーチャル映像で視認し体感できる□
 E-Real@siteでは、360度のバーチャル映像で施工事例を閲覧でき、企画から設計・施工や運用までをトータルでサポートする。360度バーチャル映像による高い視認効果によって、形状やサイズから詳細の納まりまでを現場へ足を運ぶことなく確認できるとともに、製品や設置場所の緻密な計測も可能だ。
 施工事例内では商品説明、カタログ、CAD・BIMデータがリンクされており、実際の施工物件に即して必要な情報が得られる。これまでもLIXILはCAD・BIMで利用できる製品のデジタルデータを提供していたが、実際の施工例を360度のバーチャル映像で視認することでよりリアルな臨場感が得られる。
 会員登録(無料)を行うと、氏名など個人情報、主な取り扱い建築、商品とともに、建築士番号、会社情報の入力を求められるのでアクセス時には準備も必要だ。6月1日の公開時点では15物件、34製品を公開しており、対象物件や製品を順次拡充していく。

 □人手不足や高齢化の解消とSDGs実現に向けてDXを推進する□
 内閣府の「第5期科学技術基本計画」で提示しているSociety5・0では、SDGsに準拠した持続可能な産業化の促進を重要テーマの一つとして挙げており、わが国特有の課題である少子高齢化に伴う人手不足の解消に向けてDXの推進が急務となっている。建設業においても人手不足と高齢化が深刻さを増しており、労働力の確保や熟練技術の継承、安全性の向上などに向けてDXには期待が寄せられている。
 LIXILは今後も建築のプロに向けた利便性の高いツールの展開を通して公共エクステリア製品のより一層の普及促進に貢献していく。
 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)