三谷産業と都市再生機構は、レーザースキャナーを活用した点群データの取得とBIMモデル作成に関する共同研究を実施し、成果を発表した。 □BIMモデル構築でのレーザースキャナーの有効性と点群データからBIMモデルを構築する作業を検証□ 共同研究では、施設の維持管理工程におけるBIM活用の第一段階として、レーザースキャナーで取得した点群データからBIMモデルを効率的に構築するための基礎研究を実施している。具体的には、団地の中層・高層建物のBIMモデル構築におけるレーザースキャナー活用の有効性の検証に加えて点群データからBIMモデルを構築するまでの作業の検証を行った。 中層・高層建物における検証では、ドローンを用いて撮影した鳥瞰(ちょうかん)写真を処理する方法と比較して、レーザースキャナーを用いて取得した点群データにより建物形状を把握する方法が効率や精度において有効であるとの成果を得た。一方で、点群データからBIMモデルを構築するプロセスでは人力による最適な処理手順の選択とモデリング作業が必要との課題も顕在化した。 □ドローン撮影での鳥瞰的写真の処理とレーザースキャナーでの点群データの取得方法を比較□ 検証内容をより詳細に概説する。団地の中層・高層建物のBIMモデル構築におけるレーザースキャナー活用の有効性の検証では、都市機構所有の団地の中層・高層建物(5~14階建て程度)を対象に点群データの取得、作成を実施した。 ドローンで撮影した鳥瞰的写真を処理する方法と、地上固定式のレーザースキャナーを用いて直接、俯瞰(ふかん)的に点群データを取得する方法を比較した。結果としては、寸法や座標などのジオメトリ情報について地上式レーザースキャナーを活用することで十分確認できることが判明している。 高層建物については、ドローンによる撮影が有効なケースがあるが、今回、検証の対象とした規模の点群データの作成では、場所を変えて分割して撮影する必要があるものの、地上固定式レーザースキャナーの方がドローン撮影より計測精度において優位性があることも確認している。これによって改修工事図面作成時などの現地調査の工数軽減や精度の向上が期待できる。 □BIMモデル構築の作業ルートを比較検討+点群データ取得時のデータ容量の基準を検証□ レーザースキャナーで取得した点群データからBIMモデルを構築するまでの作業の検証でも成果を得ている。BIMモデルの構築時には、計測、処理方法、処理時間などのバックデータを整理し、点群を取得してからBIMモデルを構築、部材などの属性情報を付加するプロセスがある。それらのプロセスについて複数の作業ルートを検証した結果、建物外観や住戸内部などの計測場所や規模によってルートが異なり、最低3工程で人力によるデータ処理が必要なことが判明した。 汎用(はんよう)的なBIMモデルの効率的な構築が必要な際には、今回の検証方法では課題が残るが、BIMモデル構築のための作業ルートの比較検討を実施し、点群データ取得時のデータ容量の基準を検証できたことが共同研究の成果となった。 既存建物の管理運営にBIMを援用する際には、現地の実測調査を行い、図面からBIMモデルを再構築するなど膨大な労力を要していた。本稿でも点群の紹介機会が増えている背景には、点群データを取得するスキャナーや点群データとBIMモデルを重畳表示するシステムの普及など環境の劇的な変化がある。直近では、スマホ(iPhone13など)があればAs Buildに、手軽に点群データが取得できるLiDAR(ライダー=light detection and ranging)が注目を集めている。継続して探索したい。 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)