デジタルで建設をDXする・64/樋口一希/LiDAR活用し2次元CADデータ出力

2022年6月23日 ニュース

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 プロノハーツ(長野県塩尻市)は、Apple社のiPhone Proなどに搭載されたLiDAR(※1)機能を援用して点群データを取得し、2次元CADファイル(DXF形式)として出力するアプリ「pronoScan2CAD」を発売した。容易に点群データを取得できるLiDARには、建設業界からも注目が集まっており、援用事例などが続々と報告されている。
 (※1)LiDAR=ライダー(light detection and ranging)。光による検知と測距の意味。

 □取得データをプレビュー表示+計測平面を手動抽出してDXF形式の2次元CADデータ出力□
 pronoScan2CADは、スマホ搭載のLiDAR機能を用いて現実世界をスキャンし、点群データを取得する。取得した点群データには色情報も付加されており、取得データをプレビュー表示するとともに、取得した点群データから計測平面を手動で抽出することによってDXF形式の2次元CADデータを出力できる。2次元CADデータ生成と出力までの手順を追ってみよう。
 pronoScan2CADを起動した後、スマホをスキャンしたい対象領域にかざして「スキャンボタン」を押すと現実世界の画像とスキャン結果の点群データが表示される。スキャンボタンを1回押すごとに、対象領域の点群データが取得でき、位置を変えながら繰り返しスキャンボタンを押すと点群データが重なって取得でき、ビューワ画面で確認できる。
 次いで、点群データのビューワ画面で「線分作成」を選択することによって、ビューワ画面が「下面(※2)表示」に自動的に切り替わり、回転機能がロックされる。その際、画面上部には、スキャン点数、バウンズ(※3)サイズ、ファイル名称が表示され、スキャンした対象領域の点群データの詳細が視認できる。
 線分作成モードに切り替え、下面ビューワを見ながら計測平面を直線で囲うと線分データが抽出されるので、「保存」操作を行うことで点群データが保存される。最後に「線分出力」操作を行うとDXFデータが出力されるので、各種CADソフトに読み込み、測量・設計データとして活用が可能だ。
 (※2)下面=物体の下方の面のこと。
 (※3)バウンズ(bounds)=境界、制限などの意味。ゴルフのOB(アウト・オブ・バウンズ)は直訳すると「境界から離れた外」。

 □App Storeで無料入手が可(線分データが4本までに制限)+年間6000円の課金で制限解除□
 現実世界をスキャンして3次元データとして援用するという各方面からの高いニーズに対応するべく、プロノハーツは2020年9月にiPad Proで点群計測を行うアプリ「pronoPointsScan」、21年9月には土木構造物向けに機能を改良した「prono-Construction」を発表している。従来の製造業での援用に加えて、建設・土木・測量関連のニーズにも対応するべく研究を進め、「pronoScan2CAD」を開発した。
 ライセンス・購入方法についてはApp Storeから入手可能。無料で各機能を使用できるが、ロックが解除されていない状態では、線分データを出力するための手動選択(抽出直線)が4本までに制限される。App Storeで年間ライセンス6000円の課金に応じると制限を全て解除できる。
 対応端末(プロノハーツ調べ)は、iPhone Pro(12以降のLiDAR搭載iPhone Pro)、iPad Pro(第4世代)12・9インチディスプレーおよびiPad Pro(第2世代)11インチディスプレー以降のLiDAR搭載iPad Proとなっている。
 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)