JAPIC提言プロジェクト・4/都心辺縁部の駅周辺再構築

2022年7月7日 トップニュース

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 ◇職住遊融合・価値創造空間に
 戦後の市街地拡大を受け、住居や商業が混在しながら無秩序に形成してきた大都市の「都心辺縁部」。日本プロジェクト産業協議会(JAPIC)国土・未来プロジェクト研究会(藤本貴也委員長)によると、東京で都心辺縁部に当たるのは皇居を中心に10キロ圏外~20キロ圏内のエリア。▽荻窪(杉並区)▽久我山(同)▽千歳烏山(世田谷区)▽経堂(同)▽二子玉川(同)▽自由が丘(目黒区)▽大岡山(大田区)-の各駅周辺が該当する。
 大阪では▽尼崎(兵庫県尼崎市)▽十三(大阪市淀川区)▽吹田(吹田市)▽守口市(守口市)▽門真市(門真市)▽布施(東大阪市)▽八戸ノ里(同)-の各駅周辺。いずれも住宅と商業施設の混在したエリアが駅周辺に広がっている。
 都心や都心辺縁部のさらに外周にある核都市は、継続的にリノベーションされている。一方、都心辺縁部はその流れに乗れていない。同研究会は都心辺縁部が都市としての競争力や魅力を失っていると警鐘を鳴らす。
 都心辺縁部にある駅や街は、交通結節の機能を持っているものの、駅による街の分断や緑・広場空間の不足、景観の悪化、防犯・安全面の無配慮など多くの問題を抱えている。そこで同研究会が「国土造りプロジェクト構想4」として提言したのが、都心辺縁部にある拠点駅周辺の空間再構築だ。
 中長期的に人口が減少する日本で、大都市の都心辺縁部が競争力を高めていくために必要な要素は何か。検討チームが重視したのは、斬新で独創力のある高度人材が魅力を感じる場の提供。新型コロナウイルスの影響で在宅勤務が普及する中、新しい働き方や住み方を実現する「職住遊融合・価値創造エリア」として再構築することを提言した。
 再構築の実験場として提案したのが東京の東急電鉄・自由が丘駅と、大阪の阪急電鉄・十三駅。東京と大阪を代表する都心ターミナル駅、渋谷や梅田から急行で5~10分程度の場所にあり立地利便性が高い半面、都心辺縁部ならではの昭和の雰囲気が残る古い街並みも広がっている。
 自由が丘駅では東急大井町線を地下化し、東横線を高架化することを提案。駅舎の屋上や駅前空間には緑あふれる公園を整備する。再開発事業とも連動しながら、職、住、遊の三つの機能を導入し融合。世界一、住みたくなる街を目指す。
 十三駅は鉄道新線の「なにわ筋連絡線・新大阪連絡線整備」に伴う駅の大改造や周辺再開発に合わせ、商店街や歓楽街が混在した十三ならではの「カオス文化」と「新しい街」を融合した街づくりを提案している。
 提案作りを先導した乾靖チームリーダー(竹中工務店)は、都心辺縁部にある駅や街の空間を「クリエーティブな人たちが集まる都市の価値創造拠点になる」と期待する。実現に向けて「事業を連携、持続させる制度や体制などの仕組みづくりが必要」という。