JAPIC提言プロジェクト・8/四国全県に単線新幹線

2022年7月14日 トップニュース

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 ◇観光振興など在来線に付加価値
 大小の島々が点在する多島美の瀬戸内海、四万十川の清流、四国八十八カ所のお遍路…。こうした四国が誇る観光資源の活用は、コロナ禍で落ち込んだインバウンドの回復、増加を目指す日本にとって有効な一手となるはず。だが現状は潜在力が十分に発揮しきれているとは言い難い。
 日本プロジェクト産業協議会(JAPIC)国土・未来プロジェクト研究会(藤本貴也委員長)は、欧米や東南アジアなどにある世界的に有名な島と比較すると、四国は知名度が低くインバウンドも少ないと指摘。理由の一つに高速道路網と比べ鉄道輸送網の整備が遅れていることを挙げる。JR四国によると、鉄道の電化区間は約28%と少なく、複線区間も約6%にとどまっている。
 同研究会は「国土造りプロジェクト構想8」として「四国全県単線新幹線と地域発展」を提言。瀬戸大橋を通って山陽新幹線の岡山駅と四国4県の各県庁所在市を結ぶ「四国新幹線」の整備を提案した。
 事業手法は従来の整備新幹線方式に加えPFIを併用するような方式を提言。計画延長は302キロ。単線運用区間をできるだけ導入する徹底したコストダウンによって建設費の削減を目指す。総事業費は約1兆円を見込む。
 四国新幹線の整備を巡る議論は地元でも熱を帯びている。4県の知事や商工会議所連合会会長・会頭らが名を連ねる「四国新幹線整備促進期成会」(会長・千葉昭四国経済連合会相談役)は6月1日、4県ごとに駅候補地の検討結果を発表した。四国新幹線について、将来にわたり四国の持続的な発展を遂げられるのかどうかを左右する、四国が生き残るための「装置」であるとの認識も強調した。
 JAPICの同研究会は、四国新幹線が本州などから来訪する際の利便性向上だけにとどまらず、四国を走る在来線の付加価値も生み出すと指摘する。新幹線導入に伴い、都市間・都市圏鉄道や路面電車、バス、タクシーといった公共交通の効率化を提案。特急機能を新幹線に移すことで生まれるダイヤの余裕枠を活用した観光列車の導入や、鉄道と自転車の連携によるお遍路の観光振興などを例示した。
 インバウンド誘致の対策として、四国新幹線を前提にした「国際総合スポーツ都市構想」も提唱。プロ野球チームの誘致やスタジアムなど競技施設の整備に加え、スポーツに関する科学・医療技術や教育などソフト面も整った世界に類を見ない都市形成を掲げる。
 岩野政浩チームリーダー(大成建設)は四国新幹線の整備によって「関西経済圏との連携や災害対応の強化、観光振興に寄与したい」と話している。