JAPIC提言プロジェクト・11/沖縄本島北部の観光振興

2022年7月20日 トップニュース

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 ◇伊江島空港再整備で新玄関口に
 沖縄県はアジアを代表するリゾート地の一つ。新型コロナウイルス感染症が流行する前は世界各国から多くの観光客が訪れていた。県が昨年8月に発表した県政概要「おきなわのすがた」によると、観光客数は2019年に1016万人となり、暦年ベースで初めて1000万人台の大台を突破した。
 コロナ禍で落ち込んだ観光ビジネスの回復は、公共事業の依存度が高い沖縄県にとって重要かつ喫緊の課題。日本プロジェクト産業協議会(JAPIC)国土・未来プロジェクト研究会(藤本貴也委員長)は「沖縄本島ツインゲートウェイ構想」として、さまざまな交通インフラ整備を柱とする沖縄本島北部の振興策を提言した。
 沖縄本島は沖縄県を構成する約160の島々の中で最大の広さがあり、東京都区部や琵琶湖の面積を上回る。本島北部の強みは豊富な環境資源。昨年7月、国内最大級の亜熱帯照葉樹林が広がる「やんばる国立公園」(国頭村、大宜味村、東村)が奄美大島や徳之島、西表島とともに世界自然遺産に登録された。沖縄北部の観光拠点として中心的役割を担う「海洋博公園」(本部町)には、県内屈指の人気スポットとして知られる沖縄美ら海水族館などがある。
 提言では沖縄北部に県内外から行き来しやすくなる交通インフラの整備を促進。沖縄全体の人口の大部分が集中する県庁所在地、那覇市周辺の中南部とのアクセス性を高めるような取り組みも促す。
 具体的には、県が管理している離島の伊江島空港を「沖縄北部空港」として再整備するよう提案。延長1500メートルの滑走路を2000~2500メートルに伸ばし、ターミナルも建設する。伊江島は海洋博公園から西約5キロ先にある。そこで伊江島と本島を結ぶ延長約5・5キロの空港アクセス道路を、橋梁または海底トンネルで建設することも提唱。那覇空港とともに、新たな沖縄の玄関口にするという構想だ。
 現在は名護市が起点となる沖縄自動車道の延伸などにより、沖縄北部空港と那覇空港をほぼ直結するような道路ネットワーク整備も効果が高いと訴える。
 県が那覇市と本島北部の人気スポット、名護市を結ぶ新たな鉄道として検討している「沖縄鉄軌道」(路線延長約70キロ、総事業費約5900億~約6500億円)。同研究会では、沖縄鉄軌道の整備構想の具体化も推奨。陸上交通のほとんどを道路に依存し、都市部で交通渋滞が慢性的に発生している状況も解消できると見て、住民や観光客の移動利便性の向上やカーボンニュートラル(CN)に役立つと期待する。
 これらのプロジェクトが沖縄北部にもたらす経済効果は年間で約3000億円と見込む。
 五味宗雄チームリーダー(安藤ハザマ)は「伊江島空港の再整備により那覇空港との二極化を実現したい」と展望を話している。