市況変動-識者に聞く/全生連会長・吉野友康氏/一定期間で価格見直す契約に

2022年7月29日 トップニュース

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 --業界の現状は。
 「喫緊の課題は原材料やエネルギー価格高騰への対応だ。骨材の供給も地区ごとに事情が違うなど、生コンの市況はさまざまな要因があり、全国一律に議論できるものではない。しかし、この2~3年は各地区で価格改定に取り組み、おしなべて市況が上がってきたといえる。資材価格の高騰は続いており、各地区で2022年春から大幅な値上げを打ち出した。東京都内の生コン協組(東京地区生コン協組、三多摩生コン協組、東関東生コン協組)は、6月から1立方メートル当たり3000円の引き上げを求めている」
 --値上げがどう反映されていくとみているか。
 「生コンの値上げは、原材料費の転嫁という原価の積み上げを根拠としており、それに運搬費や人件費などがプラスされる。骨材価格は調達しやすい地域とそうでない地域で事情が違うといった問題もある。値上げを表明してもすぐに全額反映できるわけではなく、これまでも地域によって数カ月~数年かかる場合があった。今回も同様に考えていたが、政府が4月に原油価格・物価高騰に対応する価格転嫁円滑化対策を打ち出して以降は雰囲気が変わった。国土交通省と経済産業省から価格調査団体や地方自治体に対し、最新の契約価格を把握して積算に用いる物価資料に適切に反映させるよう指導していただいた。全生連として資材の実勢価格が適切に反映されているか注視していきたい」
 --商慣習の課題は。
 「生コン業界では、実際の工期や工事の開始時期に関わりなく、契約時に決めた価格で生コンを販売することが慣習となっている。当然、原材料は生コンを供給する直前に購入するので、当初の見積もりよりも原材料価格が上がっていた場合は、生コン側の負担となってしまう。こうした問題を改善するには、一つの案として年度契約とするなど、一定期間ごとに価格の見直しができる契約方法に変えていかなくてはいけないだろう。簡単ではないが、考えを巡らせて方策を見つけ、行動に出る必要がある。市場規模が大きい東京などでは物件の工期も長く、そうした影響を大きく受けるため、既に検討を始めている協組もある。生コンの調達価格は変動するものだと、ユーザーの理解を得て定着させていくことが必要だ」
 --今後の活動方針は。
 「まずは国交省と経産省にご支援いただいているこのタイミングを生かして、各地区で原材料やエネルギー費用の高騰を踏まえた生コンの実勢価格が、物価資料に迅速に反映されるよう、各協組から調査団体や自治体へ積極的にアプローチしてもらうことが重要だ。全生連では引き続き国に働き掛けていくことと、各地区の成功事例を全国に水平展開することで各地区の生コン協組の価格転嫁への努力をサポートしていく」。
 (随時掲載)