デジタルで建設をDXする・70/樋口一希/中銀カプセルタワービルの再建権利販売

2022年8月4日 ニュース

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 惜しまれつつ解体が決まった黒川紀章氏の設計による中銀カプセルタワービル(東京都中央区)。現地を訪ねた建築関係者も多いのではないか。その中銀カプセルタワービルを、話題沸騰のNFT(※1)を活用してリアル空間(現実空間)とバーチャル空間(メタバース空間)の両方で再現する挑戦がLAETOLI(東京都港区、※2)と黒川紀章建築都市設計事務所との協働で進められている。

□デジタル技術の活用で現実空間とメタバース空間で中銀カプセルタワービルを再現□
 中銀カプセルタワービルはメタボリズムの代表作として世界的にも有名な建築物だが、1972年の竣工から50年が経過し、老朽化やアスベストの問題などから解体が決定し、4月から解体が始まっている。
解体されるカプセルの一部は、中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクトとともに黒川設計事務所によって保存活動の対象となっているが、合わせてLAETOLIと黒川設計事務所では、デジタル技術やブロックチェーンを活用し、現実空間およびメタバース空間において中銀カプセルタワービルの再現を目指して協議を進めていた。

□3D CADデータを基にデベロッパーやゼネコンがリアル空間で中銀カプセルタワーを建設□
 リアル空間における再建の権利については、黒川設計事務所が著作権を所有する建築図面に基づき、3D CADデータを作成、その3D CADデータを基にデベロッパーやゼネコンがリアル空間で中銀カプセルタワーを建設し、第三者に貸したり、販売したりすることができる。
 再建に際しては、黒川設計事務所が別途契約による必要な協力を行うことにより、世界各国の法規制に合わせて中銀カプセルタワービルを再建する。加えて3D CADデータは自由に使用できるためカプセルを用いたさまざまな事業展開が可能となっている。具体的には、災害時等にカプセルを災害地に輸送し仮設住宅として利用することや、季節に応じて移動するリゾート事業などが想定できる。

□NFTで中銀カプセルタワービルをメタバース空間で再現して貸借や販売することが可能□
 メタバース空間における再建の権利については、黒川設計事務所が著作権を所有する建築図面に基づき、中銀カプセルタワービル全体をデジタルアートとして再現、次いでこのデジタルアートを所有、利用、販売などができる権利をNFTとして世界で唯一、1エディションを販売する。なお、NFT自体は2エディション発行し、1エディションは黒川設計事務所が所有し、1エディションのみが販売される。
 メタバース空間でも中銀カプセルタワービルを再現し、第三者に貸したり、販売したりすることができる。当初、分譲住宅として販売された中銀カプセルタワービルをメタバース空間で再現することが可能となるなど、利用方法に制限は設けないため、新たな利用価値を生み出すこともできる。

(※1)NFT(Non-Fungible Token)=非代替性トークンと訳される。電子データの正当性を証明する印鑑のようなもの。黒川設計事務所が所有する著作権に基づく世界で唯一の作品であり、世界でただ1人(1社)が利用できる権利であることを証する。世界最大級のNFTマーケットプレイス「OpenSea」でオークション形式により販売し、スタート価格は未定。販売オークションの開始は7月22日13時、終了は8月31日13時を予定。
(※2)LAETOLI=「想いと豊かさが巡るフェアエコノミー時代を創造する」ことを掲げ、不動産クラウドファンディング「COZUCHI」を運営している。中銀カプセルタワービルではCOZUCHIにおいて約20億円を調達しプロジェクトに参加。リアル空間、メタバース空間で再現できる権利をNFTとして販売することとした。
〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)