市況変動/東北6県、生コン再値上げの秋/年度内2回は異例の対応

2022年10月12日 トップニュース

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 建設工事に不可欠な生コンクリートの価格が上昇している。今秋以降の価格改定動向を東北6県にある33の協同組合に聞いたところ、改定を「実施済み」あるいは「実施予定」と答えた協組が16と半数近くに達した。10協組は「(値上げを)検討中」と回答した。セメントメーカーの値上げに加え骨材や輸送費、電力料金の上昇もあり、価格改定は避けられないと判断したようだ。多くの協組は年度前半に価格を引き上げており、「同一年度内の再改定」という異例の対応を迫られている。
 価格改定の動向を青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島の6県にある33協組に取材した。青森の4協組は2協組が10月から1立方メートル当たり2000円引き上げた。1協組はセメントメーカーの価格改定に合わせ11月以降の引き上げを検討している。秋田で10月に価格を改定したのは6協組のうち3協組。1立方メートル当たり2000~3000円引き上げた。残る3協組も年明けに改定する方向で協議している。
 岩手県(6協組)で価格アップを決定しているのは3協組。急激な原料高が取引慣行のひずみを際立たせている状況を踏まえ、価格の設定時期を来年4月に「契約ベース」から「出荷ベース」に変更する協組もある。山形県で価格改定を決定しているのは1協組。11月からの価格改定に連動し、公共工事の予算確保やコンクリート鋪装の採用などを自治体の首長に要望した。2協組は値上げの方向で検討している。
 宮城県は1協組が来年1月の価格改定を決定している。残る5協組はセメント価格の動向を見極め対応する姿勢。ただ東北最大の都市・仙台は、生コン価格が全国的に見ても低い水準にあり、協組の組合員と非組合員の競争も激しい。価格改定の影響が周辺のエリアにどう波及するのか、警戒を強めている協組は多い。福島県は6協組のうち4協組が価格引き上げを決定している。4協組のうち1協組は新たに、契約日から3カ月経過しても荷動きがない場合は解約する「3カ月条項」を契約書に盛り込み顧客に説明を始めた。
 契約価格と販売価格が乖離(かいり)し、売れば売るほど赤字が膨らむ逆ザヤにあえぐケースは少なくない。厳しい状況にあって「春先に値上げを要請したばかりで再改定は難しい」と苦慮する協組もある。ただ「組合員の経営体制をしっかりと整え供給責任を果たすことが重要」という姿勢は各協組に共通する。資機材全般で価格の上昇や高止まりが続き沈静化の気配はない。コストアップにどう対処していくのか--。需要側と供給側のそれぞれに事情があり対応は困難を極めている。