鉄道各社の展望-開業150年-/JR東海/リニア新幹線で交通基盤を一層強化

2022年12月8日 ニュース

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◇安全・安定輸送へ不断の努力
東京~新大阪駅間を2時間30分以内で結ぶ東海道新幹線は、開業から約60年を迎える。JR東海は日本の大動脈輸送を支える東海道新幹線の安全・安定輸送の確保にあらゆる経営努力を続けている。国土形成に不可欠な交通基盤を一層強化するため、三大都市圏を約1時間で移動できるリニア中央新幹線の整備にも力を注ぐ。大規模災害を見据えた事前の備えにも余念がなく、安全・快適な列車運行に総力を結集している。
日本で初めて開かれる東京五輪を目前に控えた1964年10月1日、東海道新幹線は開通した。世界初の高速鉄道は開業から58年たっても「開業以来、乗車中のお客さまが死傷される列車事故ゼロ」(同社)の記録を維持している。自然災害などの遅延を含め、運行1列車当たりの平均遅延時分が0・9分(2021年度実績)という実績は目を見張るものがある。
国内人口と国内総生産(GDP)の約6割を占める三大都市圏をつなぐ東海道新幹線は、経済成長や国土基盤の形成に欠かせない。安全で正確な運行を続けてきた東海道新幹線だが、JR東海は経年劣化や災害時の抜本的な備えが必要と判断。全国新幹線鉄道整備法に基づき、11年5月に国土交通大臣がリニア新幹線の整備計画を決定した。
リニア新幹線は、まず東京(品川)~名古屋間で、その後は大阪まで開業する予定だ。三大都市圏を約1時間で結んだ場合、同社は「航空機からの需要転移が見込まれる」と予想。途中に設置する▽神奈川▽山梨▽長野▽岐阜-など各県の駅には「新規利用も期待できる」と先を読む。
東海道新幹線でも「のぞみ」の利用者がリニア新幹線に転移することで、「ひかり」「こだま」の運転本数と停車回数を増やす余地が出てくる。従来以上に沿線都市と三大都市の往来がしやすくなる。利便性の高いリニア中央新幹線の実現を望む声は日増しに高まっている。
安全・安心、快適な輸送を実現するには災害対応も欠かせない。同社は地震や台風といった自然災害に対する事故防止を重要施策の一つに位置付け、さまざまな対策を講じている。
中でも力を入れているのが、東海道新幹線を対象にした脱線・逸脱防止対策だ。車両自体の脱線そのものを極力防止する「脱線防止ガード」の全線設置を28年度末までに終える見通し。万一脱線した場合に備え、車両が線路から大きくそれないように「逸脱防止ストッパ」を全ての新幹線車両に導入した。在来線でも土木構造物や駅施設などの耐震化を推進。新幹線と同様、21年度にプラットホーム上屋の耐震補強にも乗り出した。
地震だけでなく、頻発する豪雨対策にも目を配る。盛り土やのり面にコンクリート防護工や、排水を促すパイプを設置するなど、災害の発生防止に力を注ぐ。沿線の降雨状況を雨量計でモニタリングし、雨量が規制値を超えると指令や駅などに警報を発して列車の運転を規制する。組織力と技術力で安全・安心な列車運行に努めている。