鉄道各社の展望-開業150年-/つくばエクスプレス/沿線開発が順調に進展

2023年1月26日 ニュース

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◇新型コロナ対策として資産の有効活用図る
2005年に東京・秋葉原と茨城県のつくば市を結ぶ都市高速鉄道として開業したつくばエクスプレス(TX)。開業から17年がたち、沿線地域では住宅開発が急速に進展し、人口も右肩上がりで伸びている。一方、新型コロナウイルス感染拡大の影響は鉄道事業に大きな影を落とした。TXを運営する首都圏新都市鉄道は、駅ナカや高架下の保有資産の有効活用といった新たな施策で経営基盤の強化に取り組む。
TX整備構想が大きく動き出したのは1985年。運輸政策審議会(現交通政策審議会〈国土交通相の諮問機関〉)の答申で、常磐新線(現TX)の整備を「JR常磐線の混雑緩和等のため都市交通対策上喫緊の課題」と位置付けた。さらに89年には首都圏での良好な宅地の供給を目的に「大都市地域における宅地開発及び鉄道整備の一体的推進に関する特別措置法(宅鉄法)」が施行された。
宅鉄法の趣旨は道路や公園、住宅、公益施設などを鉄道と一体的に計画し、きれいに整備された住み心地の良い街を生み出すこと。TX沿線の土地区画整理事業の規模は計約3200ヘクタールに上る。22年3月時点で土地整備が86%に達しており、人口は計画25万2000人に対し81%と順調に開発が進む。沿線自治体の人口は、約17年で約40万人増加している。
特に千葉県流山市は人口がTXが開業した05年と比べ36%も増加。流山おおたかの森駅周辺にはマンション、商業施設、公園のほか、多目的ホールやホテル、スーパー銭湯などが建設されている。改札前には同社が運営する複合商業施設「TXグランドアベニューおおたかの森」のフードコート、高架下には緑豊かなボタニカルパーク「GREEN PATH」が22年にオープンし、駅を中心に街のにぎわいが広がりつつある。
沿線人口の増加に伴いTXの輸送人員も開業以来堅調に推移している。利用者数の増加に対応し、同社は▽車両増備や総合基地の留置線増設▽秋葉原駅や南流山駅改良▽総合基地入出庫複線化▽守谷駅追越設備新設▽車体更新場新設-などを進め、安定的な鉄道運行の基盤を整えてきた。
開業当初は1日平均乗車人員が15万1000人だったが、コロナ禍前の19年度には39万5000人に増加。20年春には新型5両編成を導入し、朝のラッシュ時間帯の運行本数を1時間当たり22本から25本にするなど輸送力の増強も図ってきた。さらに19年度には8両編成化を決め、6両から8両対応へホーム延伸工事に着手している。
新型コロナの感染拡大を機に自宅などでのリモートワークが普及し、鉄道利用者が減少。22年度上期時点でも、1日平均乗車人員は19年度の87%にとどまる。
厳しい事業環境を乗り越え、将来にわたり鉄道サービスを提供していくため、同社は利用動向の変化に対応したサービスの在り方を検討するとともに、駅ナカや高架下など保有資産を有効活用する「商業施設等開発マスタープラン」を作成し強靱な経営基盤を築こうとしている。状況の変化に柔軟に対応し、安全安心で安定した輸送を提供する公共交通機関--。その社会的な責任を果たし地域や社会から愛され、信頼される鉄道会社を目指す。