相模鉄道は近年まで他社との相互直通運転を行っていなかったが、2019年11月にJR東日本・埼京線と直結する相鉄・JR直通線の運行を開始した。今月18日には東急電鉄との相鉄東急・直通線の開業も控えている。相鉄グループは首都圏広域鉄道ネットワークとの連携を、これまでにない大きなチャンスと捉えている。「ヨコハマ・ネイビーブルー」の相鉄車両が首都圏広域を走ることで、同社を知る機会がなかったエリアでのPR効果が発生し、沿線への興味やトライアルユースのきっかけになることを期待する。
既存施設の魅力と安全性、利便性を高めるため、連続立体交差(連立)工事や駅周辺の再整備を順次進めている。現在は鶴ケ峰駅周辺(横浜市旭区)の連立工事に着手しており、上下線約2・1キロを地下化する。これにより10カ所の踏切(うち9カ所が開かずの踏切)を除却する計画だ。慢性的渋滞や踏切事故を解消するとともに、踏切で分断されたまちの一体化を図る。鉄道の地下化で生まれた空間や駅周辺に商業施設などのにぎわい機能を整備・集積することで、新たなコミュニティーの場の創出を仕掛けている。
相鉄瀬谷駅は27年3~9月に開催される横浜国際園芸博覧会(花博)の会場となる「旧上瀬谷通信施設」の最寄り駅になる。横浜市は期間中の半年間で1500万人程度の集客を見込んでおり、鉄道輸送や周辺事業での大きな波及効果に期待している。また、横浜市は会場となる旧上瀬谷通信施設の観光・賑(にぎ)わい地区に、テーマパークを核とした複合的集客施設の整備を目指しており、2月には事業者の公募を開始した。相鉄ホールディングス(HD)は計画の推移を確認しながら、地域に貢献する機会を探る考えだ。複合的集客施設は30年代前半の開業を想定している。
同じく沿線開発ではいずみ野線ゆめが丘駅前で、相鉄グループの相鉄アーバンクリエイツと相鉄ビルマネジメントが大規模開発を手掛けている。泉ゆめが丘地区土地区画整理事業組合が施行する区画整理事業の中で、約140店舗が入る延べ約9万6800平方メートルの施設を建設中だ。スーパーマーケットやシネマコンプレックス、食のテーマパークなどが入るまちの中核的商業施設を目指す。開業は24年夏を予定する。
重要拠点である横浜駅西口地区は、引き続きエリアマネジメントを含む地域活性化に取り組む。将来に向けた物件の取得や再開発計画の検討を継続する。再開発事業では地元権利者や行政機関との意見交換・協議を重ね、具体的な計画がまとめられるよう丁寧に進める考えだ。
いずみ野線湘南台駅(神奈川県藤沢市)からの延伸計画については、19年に相模鉄道として平塚までの工事施行認可申請期限の5年延長が認可されている。同社は鉄道ネットワークの拡充と地域発展の観点から重要課題と認識しており、区分延伸を行う意思を有している。「いずみ野線延伸検討協議会」に参加し、延伸地域の需要創出に向けたまちづくりの進捗(しんちょく)を慎重に見守っている。
今後も相鉄東急直通線開業による環境の変化や、自治体による上下分離方式導入など具体的整備手法確立の要請などを踏まえ、事業性確保を大前提に事業化検討を深化する考えだ。