政府/データセンター立地誘導へ有識者WG検討開始、工期・コストに働き方改革も影響

2025年5月7日 行政・団体 [1面]

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 データセンター(DC)の整備を巡る政府の対応が活発化している。電力消費に伴うインフラ整備が必要なものの、新規の増強には時間とコストが必要。立地と既存設備の活用が課題で、脱炭素も求められる。建設業の働き方改革を課題に挙げる意見もある。政府は電力と通信の効果的な連携「ワット・ビット連携」を進めるため、経済産業省と総務省に官民懇談会を設置。傘下の有識者ワーキンググループ(WG)がDCの立地条件や誘導策などの検討に着手した。
 生成AIの利活用やDXの取り組みによって、大規模な計算資源となるDCの需要が高まっている。両省によると、生成AIの市場は2030年に約29・5兆円に達する。23年の約20倍で年平均約53%のペースで増加する。国内市場は30年に23年(1188億円)の約15倍に相当する約1・8兆円と見込まれ、ストレージやサーバーといったAIインフラの需要は23年の約3倍に増えるという。
 DCは安全保障と低遅延性の観点から国内に整備する必要がある。既に関東、関西の大規模需要地向けに立地が進んでいるが、割合は23年時点で関東64%、関西24%と偏在している。
 DCへの電力供給には、電源と系統設備が欠かせない。ただ要求に応じて能力を増強していては設備の非効率な形成を招き、工事の費用と工期が課題になる。「ワット・ビット連携官民懇談会WG」が4月21日に開いた初会合では、工期が話題の一つになった。
 会合で電力広域的運営推進機関は、電源接続のプロジェクト19件のうち、187キロボルト超の12件は概算工事費が10億~1500億円、概算工期が2~12年だったと説明。整備には電源線などの工事も別に必要になる。接続を先行して確保する「空押さえ」も問題視されているという。
 工事が長期化する背景には、資機材納期の遅延だけでなく、建設業の働き方改革が影響している。東京電力パワーグリッドは、24年ぶりの275キロボルト変電所となる千葉印西変電所(千葉県印西市)を新設し、24年6月に運転を始めた。印西エリアは大規模なDCの新設が相次ぎ、現在も問い合わせが続く。同社は工期を当初約8年と見込んだが、早期接続の要望を受け資機材や施工力を集中投下し、工期を約3年短縮した。
 会合で同社は「建設業の週休2日制義務化等」の影響もあるとし、当時の計画を25年時点に換算すると工期は10年以上との見通しを示した。DCについて余力の大きい地域への立地、系統負荷の空き容量の有効活用、DC集積地を選定した上で通信・電力設備の一体的・効率的な整備を提案した。
 WGはDCの立地条件や課題を整理し、特定エリアに電力需要が旺盛なDCを効率的に整備する方策も議論する。再生可能エネルギーや原子力の電源位置、地方創生の取り組みにも配慮した対応の方向性を6月にもまとめる予定。立地の誘導は建設需要に直結するだけに議論の行方が注目される。