新社長/長谷工コーポレーション・熊野聡氏、長谷工DNAを競争力に

2025年6月10日 人事・動静 [1面]

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 営業畑を長く歩み、会社の強みを熟知する。ゼネコンとデベロッパーの両面を持つ独自の成長を遂げてきた企業として「行動力」「目標達成力」「工夫力」「団結力」を武器に挙げる。「培ってきた『長谷工DNA』を競争力に変え、次の世代に伝えていきたい」と話す。
 --就任の抱負を。
 「経営再建を経て、ここ10年間は資本を着実に積み上げてきた。企業体力が付き、ようやく一人前になってきたと思う。資本の効率性や業務の生産性を重視しながら、向かい風の環境でも耐え抜ける企業に成長していきたい」
 --市場動向は。
 「建設事業の受注環境は良好だ。他のゼネコンも手持ち工事が多く、得意とする集合住宅では競争も落ち着いている。受注材料も豊富に抱えており、今後数年は同様の状況が続くと見ている」
 --国内外の建設事業の方針は。
 「国内は三大都市圏での展開を堅持していく。協力会社を含め、競争力を維持するには一定の需要量がなければ優位性を発揮しにくいためだ。住宅以外の施工にもチャンスがないか検討する」
 「海外で競争力を確保するには、供給するマンションの品質をいかに価格に転嫁できるかが鍵になる。各国の経済事情を考慮しながら、われわれの優位性を発揮できるマッチングを進めたい。現状はトライの段階であり、注力するエリアを模索している」
 --4月に新中期経営計画が始動した。
 「ボトムアップ型で新たな事業を考える『新規事業アワード』を創設する。事業を成功させることが目標ではあるが、社員が会社の将来を考える機運を高める狙いもある。秋ころには具体的なアイデアを募集していきたい」
 「積み上げてきた資本を生かし、M&A(企業合併・買収)にも積極的に取り組む。既存事業とのシナジー(相乗効果)を期待できる会社や、当社にない部分を補完できる会社が対象だ。今までにない新たな分野も検討していく」
  --注力分野は。
 「ホテルや高齢者住宅といった分野への取り組みも強化する。いずれも住宅との親和性が高く、培ってきた施工ノウハウを生かせる分野と見ている。需要が高いデータセンター(DC)の施工実績も増やしていきたい」
 --生産性向上の方策は。
 「マンション建設には多くの協力会社が関わる。異なる工種間のつなぎで発生する時間はまだ減らす余地がある。リレーのバトンタッチのようにタイムロスを減らすのが理想だ。前中期経営計画ではDXにも注力してきた。まだ明確な投資効果は出ていないが、定量的な検証を進める」。
 (4月1日就任)
 (くまの・さとし)1985年神戸大学経済学部卒、長谷川工務店(現長谷工コーポレーション)入社。2013年執行役員、20年4月常務執行役員、同6月取締役兼常務執行役員、23年同兼専務執行役員、24年代表取締役兼専務執行役員。好きな言葉は「至誠」。誠意を尽くし、信用を積み重ねる姿勢を重視している。奈良県出身、63歳。