東北地方整備局が秋田県由利本荘市で建設している鳥海ダムが14日に本体着工した。施工は西松建設・奥村組・フジタJV(本体建設1期)。約1990億円の総事業費を予定している。建設地を流れる1級河川・子吉川の河床を深さ40メートルまで掘り下げ、堤高81メートルの半分が地中に埋まる全国的にも珍しい構造になる。掘削作業で出た小石や砂を堤体構築の材料として使用する台形CSGダムで環境にも配慮している。=1面参照
鳥海町百宅の現場で開いた着工式には工事関係者や地域住民など約180人が出席した。鈴木健太秋田県知事や国土交通省水管理・国土保全局の藤巻浩之局長、東北整備局の西村拓局長、鳥海ダム工事事務所の沢田健所長、西松建設の細川雅一社長、奥村組の奥村太加典社長ら20人が鍬入れを行った。さらに工事着手の号令とともに現場と約400キロ離れた西松建設技術研究所東京オフィス(東京都港区)から遠隔操作したバックホウでくす玉を開披し着工を祝った。
藤巻局長は「豪雨災害が相次ぐ中、水害対策としてダムによる治水・利水は有効だ。地域の安全と安心を守り、活性化につながるダムとなることを願う」とあいさつした。鈴木知事は「県が進めるカーボンニュートラルや強靱な県土づくりを後押しするインフラとなる。積極的に連携したい」、鳥海ダム建設促進期成同盟会の会長を務める湊貴信秋田県由利本荘市長は「インフラツーリズムによる観光客増加や地域のにぎわいにもつながる」と期待した。
着工式に先立ち西松建設JVによる安全祈願祭を開き、玉串を捧げて工事の無事故、無災害を願った。細川社長は神事後に「培ってきた技術、経験を集結して安全と品質を第一に施工する。将来にわたって地域に安全をもたらす社会基盤を全力でつくる」と力強く語った。
鳥海ダムは由利本荘市を流れる子吉川沿いの浸水被害軽減や市への水道用水供給、流水の機能維持、発電を目的に開発している。堤高81メートル、堤体積143万8000立方メートル、総貯水量4680万立方メートルの規模。1993年に実施計画調査を始め、2015年に事業着手した。今後、27年度に本体打設を始め、29年度の完了を目指している。31年度の試験湛水、32年度の事業完成を計画する。
□岩川真一統括所長(西松建設)の話
「40メートルの基礎掘削は出水期の水管理や工程管理が重要になる。無事故、無災害を最優先に地域とともにダムを完成させたい」。