回転窓/誠に遺憾でございます

2025年6月17日 論説・コラム [1面]

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 「誠に遺憾です」。記者会見などで耳にする機会の多いこの言葉、本来の意味は「非常に残念である」と理解している。だが実際には責任回避の定型句として使われることが多い▼言葉の意味は時代とともに変化する。変化そのものを否定するつもりはない。けれども変化に無自覚で意味のズレを無視するような風潮は、言葉の力を軽んじることにつながるのではと危惧する▼政治家が「説明責任を果たす」と言いながら何も説明しないように、言葉を都合よく解釈し使い倒しているような気がしてならない。新聞記者にとって言葉は命。だからこそ使い方には細心の注意が必要だ▼曖昧な表現で本質をぼかすのではなく真実を伝える手段として言葉を選び抜く。違和感を覚えたら理由を考え、納得できるまでとことん追求する。それが言葉に対する誠実さにつながるはず▼AIやSNSの影響もありこの先言葉はより速く、軽く、拡散されていく。だからこそ言葉をもっと大切にと願ってやまない。自分の言葉により責任を持ち、他者の言葉にも丁寧に耳を傾ける。その積み重ねが、信頼や理解を育む土壌になると信じている。

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