近畿整備局ら/権限代行で新トンネル整備/国道169号で最長2・8キロに

2025年6月17日 行事 [12面]

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 近畿地方整備局は15日、奈良県下北山村前鬼~上池原間で計画する国道169号の災害復旧権限代行事業の起工式を下北山村役場横体育館(下北山村寺垣内)で開いた。2023年に発生した大規模な崩土により甚大な被害を受けた現道の復旧工事として、危険箇所を避けて新たなルートにトンネルを整備する。国道169号では最長となる約2・8キロの長大トンネルで紀伊半島を縦断する「アンカールート」の一翼を担う。
 起工式には国土交通省、奈良県、地元自治体、施工関係者らが多数出席。冒頭、長谷川朋弘近畿整備局長は「本事業は紀伊半島の防災・減災と地域の暮らしを支える極めて重要な取り組み。高度な技術を要するが皆さまの理解と協力の下、早期開通を目指して全力で進める」とあいさつした。
 続いて、山下真奈良県知事が「169号は地域住民の生活を支える『命の道』であり、南海トラフ地震など将来災害時にも欠かせない。国と連携して災害に強い地域づくりを進める」と強調。地元選出の田野瀬太道衆院議員も「道路の崩落が毎年のように発生している。169号を含む基幹道路は国の責任でしっかり整備を」と述べた。
 その後、伊藤努奈良国道事務所長が事業概要を説明。今回の工事では前鬼橋西詰から池原ダム北岸西側を南下する別線ルートで延長約2・9キロの新道を整備する。このうちトンネルが約2・8キロを占め、同国道で最長となる。幅員は7・5メートルで2車線と路肩を確保する。まず下北山村スポーツ公園付近から工事用道路を整備し、作業用トンネルを構築。その後、本線トンネルの途中からも掘削を進める。施工は技術提案・交渉方式(ECI)で1月に技術協力業務の契約を結んだ鹿島が担当する。
 同事業は国が権限代行で実施するもので、奈良県が要望し、24年3月に事業化。4月には「奈良南部災害復旧対策出張所」を新設し、168号と169号の復旧事業を一元的に管理する体制を構築した。
 式典では地元の高校教師や観光、医療関係者から「受験にも影響があった。早くトンネルができてほしい」「緊急車両の運行や物資輸送に期待している」といった声が寄せられた。南正文下北山村長は「このトンネルは復興の象徴であり、未来を開く希望の道。地域の命と暮らしを守る道として安全な完成を心から願う」と語り、関係者による鍬入れで工事の安全と早期完成を祈願した。
 23年12月の崩土では約40メートルにわたり土砂が流出し、車2台が巻き込まれる死傷事故が発生。約半年間にわたり全面通行止めとなった。現在、暫定通行が始まっているが、周辺には深層崩壊の恐れのある地形が点在している。