第59代会長に就任した。会員が半歩踏み出すことで大きな果実を得る「コミットメント」を掲げ、少子高齢化や国際競争力など直面する課題に挑む。頼れるプラットフォームとして会員の活動を支え、建築の可能性を開き社会の発展に尽力する。
--就任の抱負を。
「建築や都市の学術・技術・芸術資源を統合しつつ創造する文理融合の力が学会の強みだ。強みを社会の発展につなげ、希望が持てる社会をつくるきっかけ、礎になっていきたい。いろいろな人に開かれ、建築の価値を見つめ、社会を大きく変革していく場にしていく」
「安全・安心やカーボンニュートラルなど建築を取り巻く環境が複雑で多様になる中、人口減少や建設費高騰などにより今まで普通にできていたことが難しくなっている。こういう時こそ、さまざまな知恵を集めながら社会を再構築していく。その際の起点として建築の役割は大きい」
--注力する施策は。
「新しい旗を立てるのではなく、既存の資源を生かしつつ、少し踏み込むことで変化を生み出す。まずは学会が持つ価値ある知財を海外に発信する活動に取り組む。人口減少社会で若手人材が限られる中、持続可能で筋肉質な仕組みを作り上げる。多くのコミットメントを具体化していくが、この二つは2年間の任期中に実現したい」
--5月に建築関係5会で次世代の人材育成に向けた提言を発表した。
「国際的で魅力ある次世代の建築職能人材を、教育界と産業界が一丸となり地に足を着け育てていくことは非常に重要だ。学生には在学中、自身の学問領域や可能性に向き合い、留学などさまざまな経験を通じて基礎力を付けてもらいたい。そうした正しいメッセージを伝えるというプラットフォームの役割を自覚し、発信していく」
--デジタル教育は。
「デジタル教育を底上げするため、電子的教材をオンラインで共有する仕組みを構築する。現在、試作版ができたところ。デジタル教育の対応をどう再構築するかは学会が担う課題だと考えている」
--土木学会との連携は。
「両学会は2021年に相互協力の覚書(MOU)を交わした。共同タスクフォースに構造設計の基本や災害連携など個別の課題ごとにワーキンググループ(WG)を設置し議論している。能登半島の被災地で復興を手伝っているが、金沢工業大学の土木の先生と連携している。個別対応ではなく、WGでの議論の成果を反映した共通の知として機能している。インフラを担う専門家同士、コミュニケーションを続け、その成果を一緒に発信していきたい」。
(5月30日就任)
(おのだ・やすあき)1986年東北大学工学部建築学科卒、東北大助手。96年助教授、2007年教授。21~23年に建築学会副会長を務めた。専門は建築計画学。せんだいメディアテークや横須賀美術館などの建築計画を担当。著書に『プレ・デザインの思想』など。受賞歴は建築学会賞(論文)、土木学会デザイン賞など。石川県出身、62歳。