持続可能な建設コンサルタント業界の実現を目指し、社会的な認知度や地位を高める活動に注力する。生成AIなどを用いて作成した業務成果品の著作権の在り方について、生産性向上を推進する観点からの改善、オープンイノベーションによる事業領域の拡大にも意欲を示す。
--当面の課題は。
「建設コンサルの認知度や知名度はまだまだ低いと感じる。会員企業は発注者が定めた仕様書に基づき、高度な技術力で優れた業務成果品を提供しているにもかかわらず対価が十分でない。その一つに成果品の著作権が全て発注者側に渡ってしまう現状もある。まずはこれらの問題を解決しながら、業界の地位を向上していきたい。発注者を陰で支える立場だけでなく、最終的には政策提言も行うなど主体的役割を担う実力を身に付け、持続可能な業界を構築していくことが大切だ」
--優先する取り組みは。
「建コン協内に『建設コンサルタントの地位向上検討委員会』を設置し、さまざまな課題を議論する。成果品の著作権が発注者の側にあるままでは、生成AIの活用などで権利上の問題が生じる可能性がある。7~10月の国土交通省地方整備局を中心とした意見交換会などで、著作権の問題を発注者と共有したい」
「改正公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)の運用指針に脱炭素などの技術活用が発注者の配慮事項に加わり、知的財産権への配慮も盛り込まれた。地位向上検討委員会では実際の発注で反映されているかモニタリングする。技術者の継続的な処遇改善も重要だ。2025年度に業界の地位向上に必要な課題を整理し、26年度にもアクションプランをまとめたい」
--オープンイノベーションの考え方は。
「5月に策定した『建設コンサルタントビジョン2025』に基づき、業界の知見と技術を結集し業界内外の会社と結び付ける『建コン協マッチング・プラットフォーム』の検討に着手した。多様化、複雑化する社会課題に対し、業界内だけでは対応が難しくなりつつある。例えば衛星防災情報のサービスや自動運転の社会実装サポートなど、貢献できるものが多いのではないか。中小の建設コンサルタントにも参加してもらえば、事業領域の拡大だけでなく業界の底上げも図れるだろう」
--人材の確保や活躍促進の考え方を。
「地域コンサルタントの担い手不足が顕著だ。広域コンサルタントと地域コンサルタントのリクルート活動のすみ分けも考える必要がある。女性比率の低さも課題だ。建コン協の会員企業には女性委員を現在より1人でも多く選出するよう要請している」。
(5月29日就任)
(おおもと・おさむ)1986年京都大学大学院工学研究科交通土木工学専攻修了、96年パシフィックコンサルタンツ入社。2016年取締役、17年常務、18年代表取締役専務、22年社長。建コン協では23年副会長、関東支部長を経て現職。「業界の認知度を高めて持続可能性を高めたい」と意気込む。愛媛県出身、64歳。