第3次担い手3法の成立から1年--。公共工事の現場では改正法に基づく先導的な取り組みが動き出した。建設業の担い手確保を目的に据え、これまでの業界慣習の見直しを促す姿勢は、改正建設業法だけでなく改正公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)にも通底する。国土交通省は直轄事業で公共発注者としての「範を示す」考え。地方自治体にも新たなルールにのっとった行動が求められる。
発注者共通のルールとして改正品確法の規定内容を盛り込んだ「運用指針」が2月に決定し、2025年度から全国の公共工事・業務で適用された。新指針では働き方改革・処遇改善と生産性向上の二つを大きな柱に据える。「担い手を確保し、補っていく」という意味で相互に補完関係にあると、国交省で発注行政を担う沓掛敏夫官房技術審議官は説明する。
他産業とそん色ない休日取得を前提とした工期設定や、物価変動などに対応したスライド条項の運用、ICTや新技術の積極的な活用などを具体策として列挙。加えて、地域の実情に応じた発注や災害対応時の保険料負担などを通じ、地域の建設業界の維持に向けた環境整備に注力する。「地域の守り手となる建設業を支えていく」と強調する。
品確法の趣旨が十分に浸透していないとの指摘がある地方自治体、特に市町村への周知徹底も肝要だ。「発注行為を通じ(地域の)建設業が抱える課題を解決していくという意識を持ってほしい」と呼び掛ける。
業界側にはICTや新技術の活用に「今のうちに取り組んでほしい」と求める。芽を出したばかりの技術が多く、業界全体で手探り状態だからこそ「今やれば追い付いていける。取り組みに差が開いてしまう前に、みんなで新技術を導入し底上げしていくことが大事だ」。バックオフィス業務などの変革で職場環境が変わり「女性や若手、さらに従来は縁がなかった人材にも、担い手確保の幅を広げられる」とも期待する。
運用指針に掲げた取り組みを「直轄現場で先導する」との意識はとりわけ強い。週休2日や適正工期など、直轄工事から自治体や民間の工事に波及させてきた以前からの流れを加速させる。さらに踏み込んで、業界全体が直面する担い手不足の打開に向け、受注者側の努力も引き出したい考え。「全体がチームとなって取り組む必要がある。でなければ全体として業界が良くならない」と訴える。
長年続いた働き方や商習慣のままでは「選ばれない業界になってしまう」との危機感を発注者の立場で共有する。運用指針に基づき直轄工事で試行する労務費・賃金や労働時間の実態把握を念頭に、「直接関係する元請の受注者だけではなく、その先まで意識を向けていきたい」と話す。元下双方の協力を得て、働き手の適正な処遇などを確保していく必要性を指摘する。
BIM/CIMなどによる現場業務のデジタル化は、業界慣習の転換も迫ると認識する。発注者と受注者、設計者と施工者といったプロジェクト関係者間で「一気通貫でデータ連携することで発現するメリットがたくさんある」とし、今まで以上に「つながりを持つ」意義を訴える。公共工事に携わる官民のプレーヤーがより密接に協調し、品確法の理念や責務を現場で実装していく。