建設業の未来-日建連「新長期ビジョン2・0」・1/スマート技術で未来を開く

2025年7月31日 建設業の未来-日建連「新長期ビジョン2・0」 [1面]

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 建設業に関わる幅広い関係者が共有でき、建設業全体を俯瞰(ふかん)した中長期的な方向性とは--。日本建設業連合会(日建連、宮本洋一会長)が2050年を見据え、今後10年間で建設業の取り組むべき課題や具体的な方策を示した「建設業の長期ビジョン2・0」を策定。経済や暮らしを支える社会資本の整備・維持管理・更新の重要性が増す中、宮本会長はAIやデジタル技術などを駆使し「明るい未来に貢献していく」と話す。若手や外国人から選ばれる魅力的な産業を目指す施策を打ち出した。
 日建連は旧長期ビジョン(15年策定)で掲げた目標の成果として、▽社会保険の普及▽週休2日・4週8休の推進▽賃金水準の向上▽建設キャリアアップシステム(CCUS)の運用▽女性技能労働者の活躍-などを挙げた。ただ、依然として技能労働者の減少に歯止めがかからず、処遇改善も道半ばの状況にある。
 人口減少が進み、他産業との人材獲得競争が激化する中、建設業の将来の担い手不足は、10年前と比べてより深刻化している。国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(令和5年推計)」によると、50年の総人口が1億0469万人まで減少し、生産年齢人口(15~64歳)も現在と比べ2000万人近く減る見通しを示した。
 一方、建設業界を取り巻く環境はここ10年で様変わりした。現場でIT・デジタル化が進展するなど生産性向上に向けた取り組みを実践。時間外労働上限規制の適用などをきっかけに、働き方自体の見直しも進んだ。激甚化する自然災害や気候変動などの環境変化にどう向き合い、対応・適応していくかも建設業の大きな役割となった。
 新しい長期ビジョンは時代を俯瞰した上で、50年の社会を▽急激な人口減少と高齢化の進行▽AIやロボットなどのデジタル技術の本格展開▽働き方や暮らしの多様化▽災害の激甚化▽インフラの老朽化と再構築▽脱炭素社会の実現▽グローバル化と国際的な安全保障の複雑化▽宇宙・海底・地底といった人類未踏の領域への挑戦-の八つのトレンドに大別。これらに対応する建設業の姿を「プロフェッショナルの集合体」「次世代型の生産現場」「安全・安心を守る守り手」「未来を創造するイノベーター」と位置付けた。
 例えばAIやロボットの導入により建設現場は、死傷病者ゼロを目指す安全な職場へと生まれ変わり、危険作業をロボットが担うことで、高度な技能を持つ管理者・開発者としての役割に特化する。完全自動施工による天候や時間に左右されない現場、生産性の飛躍的向上、マルチタスク化された作業体系、仮想空間を活用した遠隔施工などを新しい現場の姿として展望した。
 未来のまちづくりを先導する「イノベーター」の役割も果たす。複数のゼネコンでは宇宙や海底の施工も視野に、未来の社会基盤の構築に向け動き出している。建設業が新たなフロンティアを切り開く開拓者となり、人類未踏の領域へ挑む未来を描いている。

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