中国のドローン最大手DJIの小型ドローン「Mini4 Pro」が、今年5月に日本の第2種型式認証を取得し、業界を驚かせた。型式認証制度はドローンの安全性を担保する国の重要な制度だがこれまで登録機種が伸びず、制度の実効性に課題が指摘されていた。国内ドローンの大半を占めるDJI製のドローンが型式認証を取得したことで、登録機種が一気に増える可能性が出てきた。今後、型式認定制度を巡る風向きが変わるかもしれない。 ドローンの型式認証を取得している機体は10月初め時点でわずか7機種。飛行経路下の立ち入り管理措置を不要とする第1種型式認証の取得機種は、ACSL製「PF2-CAT3型」の1機種しかない。最も難度の高い「レベル4(第三者上空で補助者なしの目視外飛行)」が普及しないのは、操縦者の技量を示す1等無人航空機操縦者技能証明の取得者不足に加え、機体の品質を担保する第1種型式認証の取得機体がほぼないというのも理由の一つだ。 ドローンの型式認証取得がごくわずかにとどまるのは、取得するための負担に比べ、目に見えるメリットに乏しいからと言われる。レベル4飛行では第1種型式認証と1級ライセンスがあっても結局は許可申請が必要。第2種認証と2級操縦ライセンスがあれば「人口集中地区(DID)上空の飛行」などの一部の特定飛行で許認可手続きを省略できるが、認証がなくても許可申請をすれば飛行可能だ。 だがDJIが型式認証取得に踏み切ったことで今後、他のメーカーにも型式認証の取得が広がるかもしれない。手続きの簡略化や国による安全の保証というメリットがユーザーに認識されれば、長距離飛行や自律飛行などの普及促進につながり、ドローンビジネスの追い風となることも期待できる。 ドローンの世界では、次々と新たな機体、機能が登場している。自動離着陸と充電、自律飛行を組み合わせた「ドローンドック」によるサービスは23年の登場以降、急速に広がりつつあり、建設現場での活用例も増えている。エンジンとモーターを組み合わせたハイブリッドドローンは、国土交通省の実証実験で3時間以上の長時間飛行に成功。今後、災害時や物流での活用が見込まれる。次々と登場する新型ドローンの安全性を担保する制度として定着すれば、通常の航空機と同様に型式認証は重要なステップになるかもしれない。 政府は24年にまとめた「空の産業革命に向けたロードマップ2024」で、「ドローンを通じた社会、経済の高度化」や「手軽かつ安全なドローン運航の実現」を目標に掲げた。急速に変化するドローン市場でさらなる普及と社会実装につなげるために、市場の変化を先取りできるかどうかが、次代の主導権を握る鍵となる。 (編集部・木全真平)








