改正建設業法で規定する「労務費に関する基準(標準労務費)」の運用が始まった。中央建設業審議会(中建審)が2日の総会を経て、標準労務費の基本的な考え方をまとめた文書を同日付で勧告した。12日には改正業法が全面施行となり、著しく低い労務費の見積もり・契約規制と総価でのダンピング規制が効力を持つ。公共工事と民間工事を問わず、受発注者間や元下間など建設工事のすべての取引段階の請負契約で、標準労務費をベースとした価格交渉が必要だ。=2面に関連記事
勧告文書には標準労務費の目的や設定方法、個別契約への適用方法などを明記した。鉄筋や型枠など工種別の具体的な数値は勧告対象にしない。具体値は職種・分野ごとの関係団体で調整が整った工種から順次、1トンや1平方メートルなどの「単位施工量当たりの労務費」の形で国土交通省が決定、公表する。
標準労務費は、改正業法で導入する技能者の処遇改善に向けた新たなルールの核となる。勧告文書では「建設工事の取引に関わるすべての当事者がパートナーシップに基づき、それぞれの立場で担うべき役割を果たすとともに、責任ある行動を取るよう求められる」と強調する。
発注者を含む注文者には、価格交渉の場面で受注者からの見積もりを尊重し、労務費や必要経費が適正に確保された額で契約する商慣行の定着を期待。受注者が見積書を作成しやすい環境を整えるため、見積期間の十分な確保や精度の高い設計図書の提示を要請する。
受注者には労務費・賃金を「もらったら払う」という受け身の姿勢を改め、「払うためにもらう」という主体的な姿勢への行動変容を期待する。
建設工事の需要に対し供給が滞らないようにする観点で、労務費や必要経費の適正な確保を前提としつつ、総額としての建設コストの上昇を抑える努力も必要と指摘。建設業界には生産性向上に加え、非効率が指摘される過度な重層下請構造の解消に「自律的に取り組むことを期待したい」としている。







