BIMの課題と可能性・34/樋口一希/概算見積もりソフトとBIMの連携・2

2014年9月25日 トップニュース

文字サイズ

 『プレコンストラクション』により企画計画段階で積算(コスト検討)する概算見積もりソフト「Cost Navi Pro」(建築ソフト開発)。概算精度6%以内、同社検証物件の標準偏差で最大10%程度を実現した同ソフトとBIMモデル=3次元データとの連携の実際を報告する。


 □対象建物の形状(モデル)構築と合わせてBIMから3次元モデルを援用する機能も装備□


 「Cost Navi Pro」は、対象建物の形状を自動認識し、設計データを自動設定して細目レベルの数量を拾い出す。BIMには詳細な3次元モデルを構築する機能が装備されているが、現状では、設計者は設計の初期段階で積算に必要な情報を描かない。『フロントローディング』の実態だ。

 BIMとの連携は、この「対象建物の形状認識」で効果を発揮する。BIMから読み込まれた対象建物の形状に基づき、内蔵の構造計算プログラムによって躯体、杭、山留めを自動設定値に基づき構造計算する。床面積の歩掛かりなどでは反映しにくかったスパン・階高、荷重・外力、基礎形式などの条件も反映させる。

 延べ床面積、階数など、限られた変数:統計値に依存する積算システムの弱点は、建築基準法の改訂や物価スライドなどで、積算の根拠となる統計値自体がすぐに陳腐化する面で顕著だ。


 □発注者・建築主がCost Navi Proを極積的に採用 背景にある早期の概(積)算の必要性□


 「Cost Navi Pro」は、デジタル空間上に、積算に特化した対象建物を『プレコンストラクション』し、「精(積)算」に限りなく近い「概(積)算」を実行する。

 約860社(約4800本)のユーザーが「Cost Navi Pro」を採用しているが、内実を検証するとソフト特性がよく分かる。ゼネコンでは、設計施工案件における企画計画段階での積算(コスト検討)実務の迅速化、高精度化が競争力を左右する。

 発注者・建築主としてのマンション・デベロッパーなどはより切実だ。『概積算』段階で設計・施工の発注を準備し、商品としての市場価格も精査することが必須だ。そのために求められるのが積算に特化したともいえる『プレコンストラクション』だ。

 一式表記ではなく、内訳明細書が作成できる効果は大きい。関係各社との厳しい交渉も、積算根拠を把握する中で進められるとともに、商品価格の早期設定にも援用できる。


 □BIMと積算ソフトとの連携の将来像が見えるカスタマイズ版の存在と運用効果□


 BIMソフトとの連携の現況。特筆できるのはカスタマイズ版の存在だ。秘匿契約の壁があり詳細は公にできないが、BIMの3次元モデルと連動し、契約社向けに特化した正確、かつ迅速な「精(積)算」を実行する。

 ▽GLOOBE(福井コンピュータアーキテクト)

 14年2月にIFCを介してリンク。外壁線・間仕切り線・柱・梁を標準で読み込む。要望があれば建具・外壁仕上げ・部屋仕上げも読み込み対応可能。

 ▽Revit(オートデスク)

 大手ゼネコンのカスタマイズ版。ワンクリックで積算を実現。BIMからデータを受け取り、内訳明細書を出力。Cost Navi Proで設定した構造断面、仕上げ等をBIMに戻す機能もある。データはIFCではなく独自フォーマット。

 ▽VectorWorks(エーアンドエー)

 大手デベロッパーのカスタマイズ版。CADからデータを受け取り、3分程度で内訳明細書を出力。
 〈アーキネット・ジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)