電線にちょこんとツバメが止まっていた。越冬地から来たのだろうか。気のせいか、住まいのマンションを見つめているように思えた▼ツバメは一夫一妻の絆が強く、毎年同じ場所に戻る習性があるという。前年と同じ相手との“再婚”も多いらしい。その話を思い出すと、あの視線は「ただいま」と言っていたようにも映る▼巣作りの準備だろうか。ほどなくしてエントランスのタイルに1羽がしがみついていた。まるで内覧会のさなかのようだ。やがて新居が整い、卵が産まれ、3週間ほどでひなが巣立つ。慌ただしくも濃い時間が流れ出す。ツバメが軒先に巣をかけるのは、古くから縁起が良いとされてきた。外敵を避ける知恵であると同時に、人の近くは安全という記憶を受け継ぐ証しなのかもしれない▼ふん害などで巣作りを敬遠する声も耳にする。それでも、この場所を選んで戻ってきてくれたのは心が弾む。限られた季節、同じ建物で暮らす者同士、少しだけ寛容でいたい▼縁のある個体かどうかは分からない。それでも、またここを選んでくれたと思うだけでワクワクする。2年目もどうぞ遠慮なく。静かな歓迎を、今年も。





