2016年4月16日に熊本県南阿蘇村で発生した大規模斜面崩壊によって落橋した国道325号阿蘇大橋。九州地方整備局の権限代行により架け替えられた新阿蘇大橋は将来の地震でも致命的な損傷を避け速やかに復旧できる設計が施された。開通から5年が経過した今も地域交通の要として大きな役割を果たしている。 ◇長大福岡支社長・西村一朗氏 福岡支社の構造技術部長として、震災当初は熊本市や熊本県から災害査定の資料作成などに関する依頼を受け、対応に当たった。調査で目にした被害は、過去に経験したものとは全く異なっていた。熊本県八代市の横江大橋では、地震動により地中の基礎が損傷し、中間橋脚が2メートル沈下した。南阿蘇村の南阿蘇橋では、制震ダンパーが取り付くコンクリートが損傷し機能不全となり、阿蘇長陽大橋でも橋台周辺の地盤が沈下し桁が宙に浮くなど、地震動の猛威と複雑さを痛感させられた。 阿蘇大橋は、九州整備局から建設コンサルタンツ協会に橋梁予備検討等業務への協力要請があり、弊社が担当することとなった。16年5月20日に初回の協議を行い、学識者らで構成する技術検討会で審議が行われ、わずか2カ月余りで架け替え位置と渡河部の橋梁形式を決定した。 阿蘇大橋は元の位置より約600メートル下流で架け替えられ、全体延長は525メートルに及ぶ。メインの渡河部は345メートルのPC3径間連続ラーメン箱桁橋、アプローチ部は国道57号側から115メートルの鋼3径間連続鈑桁橋と65メートルの鋼単純箱桁橋で構成される。架け替え位置の検討に際しては4案を比較し、斜面崩壊や活断層に対する安全性、交通の円滑化、利便性の向上などを総合的に判断して現在の位置が選定された。 橋梁形式は、活断層へのリスク、斜面変状に対する安全性、工期、景観性の四つの観点で決まった。活断層が存在すると推定される箇所の上を通る部分には、将来断層変位が生じたとしても橋全体に影響を与えないようにするため、単純桁の鋼箱桁橋を採用した。 上・下部工をつなぐ支承には、断層変位が生じた際、一番先に壊れて力を逃がす「ヒューズ」のような役割を持たせた。橋の継ぎ目にある伸縮装置も断層変位に追随して動くように改良し、断層交差部の橋脚は、橋座面を橋軸直角方向に架橋地付近で確認された断層変位量程度拡幅することで、同程度の断層変位が生じても落橋に至りにくくなるよう配慮した。 橋脚基礎の施工では、阿蘇の景観の一つである柱状節理への対策が必要となり、リングビームが閉合しない半円形の特殊な土留め構造を考案し、施工業者と共同で特許を取得した。 業務履行中に施工業者が決定するなど、常に時間との戦いだった。30年以上業界にいて、いろいろな橋の業務に携わったが、新阿蘇大橋が間違いなく1番印象に残る仕事となった。 新阿蘇大橋での経験は、20年7月の熊本豪雨での調査や流失した橋梁の架け替え検討などの災害対応に大きく生かされた。 災害対応では一刻も早く元の生活に戻れるよう、自社の技術力で社会貢献をしたいとの思いが強くなる。若い技術者にはそのような経験を積んで、インフラ整備や管理の一翼を担うことに誇りを持ち、多くの業務に携わってもらいたい。






