東大、大手ゼネコン4社ら/3Dプリンターで建設革新/大規模土木構造物に適用へ

2026年5月7日 行政・団体 [3面]

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 3Dプリンターで建設プロセスを抜本的に変革する。東京大学と大手ゼネコン4社を含む民間6社は、コンクリート構造物の新たな標準工法として3Dプリンターの確立に向けた社会連携講座を開設した。小規模施工にとどまる3Dプリンターを橋梁やダムといった大規模な土木構造物へ広げ、新たな巨大市場の創出も視野に入れる。代表教員を務める東大大学院工学系研究科の石田哲也教授は「大規模土木構造物で標準工法として確立されれば、市場へのインパクトは相当大きい」と見る。
 4月1日付で開設した社会連携講座の名称は「建設用3Dプリンタによるコンクリート構造の革新」。東大と大林組、鹿島、清水建設、大成建設、首都高速道路会社、JR東日本が参画する。「大手ゼネコン各社が開発に注力している3Dプリンター技術を基盤に、道路や鉄道工事で本格適用する段階に入った」。石田氏は6社が参画する意義をそう語る。
 石田教授によると、建造物の施工に3Dプリンターが本格適用され始めたのは2020年代初頭。小規模施工で先行してきたある地域建設会社の実績では、約6年で適用件数が10倍超に増えた。ゼネコン4社も独自の技術開発に注力し、実工事や技術研究所に導入している。さらに「首都高速会社やJR東日本は、さまざまな制約が多い都市土木工事に対応するため、3Dプリンターに大きな可能性を感じている」と話す。
 7者が目指すのは、3Dプリンターを大規模な土木コンクリート構造物で、現場打ちやプレキャスト(PCa)に続く「第3の標準工法」として確立することだ。7者は約1年前に共同研究を開始。石田氏は独自技術開発に力を注ぐゼネコン4社の動向も踏まえ、「スペックや材料などをがちがちに縛るのではなく、性能規定型で品質保証などのプロセスを標準化した方が現実的だろうという方向に固まった」と説明する。
 先月には、社会連携講座の開設後初の会合を開いた。▽施工▽設計・検査▽変革-の三つをテーマにワーキンググループ(WG)を立ち上げ、座長を決定した。変革WGでは、中長期的な視点で、3Dプリンターの型枠利用にとどまらない直接造形など、より踏み込んだ形で大規模な土木構造物への適用を模索する。
 石田教授は「3Dプリンターを前提にしたゼロベースからの建設プロセスも研究したい。全工程がデジタル化され、パラダイムシフトが起きるだろう。例えば検査は従来の抜き取りではなく、実質的に全量検査となる。設計や施工でも同様の効果があるはずだ。こうしたポテンシャルを生かす体系をつくっていきたい」と展望する。
 時期は未定だが、いずれ「基盤整備WG(仮称)」を立ち上げ、3Dプリンターで施工した構造物の品質を担保するための協会設立も検討する予定だ。3Dプリンターの操作者向け資格や技術認証制度の創設も探る。
 石田教授は「実際に3Dプリンターが大規模土木構造物で標準工法として確立されれば、市場へのインパクトは相当大きいだろう」と見る。さらに「ゼネコン各社が保有する要素技術は世界でもトップレベルだ」と述べ、国際展開も視野に入れる。自身が中心となって土木学会が作成した、3Dプリンターでつくる埋設型枠の技術指針について、国際規格ISOの認証取得を目指している。
 社会連携講座の設置期間は29年3月末まで。6社の賛同が得られれば新たな企業の参加も可能。学生も参加し、次世代技術者の育成を後押しする。東大は開設を記念するシンポジウムを28日、東京都文京区にある東大伊藤国際学術研究センターで開く。