◇京都を舞台に人との縁つづる
大成建設の元副社長執行役員で、社友の金井克行氏が執筆した小説『銀閣寺道』が、講談社エディトリアル(現・講談社BECK)から出版された。京都で過ごした学生時代の思い出や出来事を題材に、不思議な体験も交えて人との大切な出会いなどについてつづっている。金井氏は「建築屋の書いた小説だが、私がたどり着いた人生観にも触れている」と話す。
小説は「東田保久」のペンネームで出版した。かつて京都市内を走っていた市電の停留所「銀閣寺道」をタイトルとし、停留所の所在地である左京区北白川の東久保田町からペンネームを取っている。
金井氏は群馬県出身。1974年京都大学工学部建築学科を卒業し、大成建設に入社した。都市開発事業に長年携わり、執行役員都市開発本部長、副社長執行役員などを歴任した。2022年に退職し、現在は街づくりのコンサルタント会社「街サポート」を経営する。
書籍は「銀閣寺道 白川女と二人暮らし」「新京極 人形のあやべ」「京都下鴨 それぞれの物語」の3編が収められている。「銀閣寺道」は、18歳で下宿した古い納屋のような家で、家主のおばあさんと2人で暮らしたころの話。このおばあさんは町で生花を売り歩く京都伝統の「白川女(しらかわめ)」であり、町中でばったり会った時に見たその姿が、「りんとした美しさで見とれてしまった」という。
だが、この翌週におばあさんは車にひかれて亡くなってしまう。そして引っ越し先の下宿で体験した不思議なこととは…。さらにそれから半世紀後、京都の町を見下ろす東山の墓地での再会や時を超えた心の中での会話など、切ない思い出を書きつづった。他の2編では、アルバイトをしていた人形店の家族との出会いや別れ、心の交流を描いている。
金井氏は記憶を掘り起こすだけでなく、思い出を確かめるために図書館での調査や京都に赴いての現地取材も行った。装本のイラストや地図は、大学の同級生が担当。京都という土地への思いや情景が視覚的に表現されている。
今回の出版について「建設会社一筋に50年近く勤め上げた後、『何かやりたい』との思いで小説を書いた」と金井氏。「若さゆえの至らなさや上手に人付き合いができない情けなさ、なぜ逃げてしまったのかと今になって後悔する数々の無念、この年になって再訪した時の心温まる再会。そんな皆さんも思い当たるような場面がたくさん出てくる」という。続いて「仕事を通じた人との大切な出会いについて書いてみたい」と、第2弾の小説執筆にも意欲を見せる。
(講談社エディトリアル〈現・講談社BECK〉税込み1485円)







