19世紀末に英国人宣教師で登山家のウォルター・ウェストンが著した『日本アルプスの登山と探検』は、日本の雄大な山々の魅力や風習を世界に紹介した。1896年にロンドンで出版されてから、今年で130年を迎える▼長野県松本市の上高地には、ウェストンのレリーフが設置されている。今年も6月第1日曜、現地で「ウェストン祭」が開かれた▼上高地の山岳リゾート地としての歩みは、玄関口の道路トンネルなくしては語れない。菊地俊朗氏の著書『釜トンネル 上高地の昭和・平成史』(信濃毎日新聞社)を読むと、トンネルが地域社会といかに密接な関係にあるかが分かる▼国土の多くが山地の日本で、トンネル施工の人材確保は重要だ。だが日本建設業連合会(日建連)の調査資料では、トンネル切羽作業員が高齢化によって、2034年には大幅に減少すると予測されている。新技術の導入や標準化、施工の自動化などが急がれる▼かつて秋の上高地を訪れた時、地元の方に「今度は新緑の6月ごろにもぜひ」と勧められた。当時はまだなかった現在の釜トンネルなどを抜けて、初夏の色に彩られた風景に出会いたい。







