BIMの課題と可能性・36/樋口一希/建築主にとってのBIM運用・2

2014年10月9日 トップニュース

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 延床面積9万2700平方メートル、RC・SRC造、地下1階地上14階建て、病床数757床(現新棟を含め1033床)。大規模病院建設という巨大で複雑なプロジェクトにおいてBIM運用するに際して、サブコン、ソフトベンダーまで参加のBIMチームを編成することから挑戦を開始した。


 □巨大プロジェクトでのBIM運用において設計者・施工者を後押しした建築主の存在□


 BIM運用がスタートしたのは11年2月。日建設計、竹中工務店ともにこれほど大規模な病院建設でのBIM運用は初めてであった。プロジェクトの巨大さ、初めてのBIMによる設計・施工のコラボレーションなど、リスクが大きすぎると、関係者間でも躊躇する意見はあった。

 敢えて挑戦したのは建築主からの「BIM採用への要望」=後押しと共に、巨大で複雑であるからこそBIMが最も効果を発揮する=ノウハウ蓄積が設計者・施工者として急務だと考えたからだ。

 大規模病院建設プロジェクトでBIM(Revit Architecture)運用するために3Dイノベーションズ(代表・井上淳氏)からの全面的なサポート体制を確保した。

 現実的にBIMを活用するために東洋熱工業、きんでんなど各社と協働し、日建設計の統括の下にBIMによる実施設計を進めた。それらチーム編成を進めつつ、施工者である竹中工務店と共々、BIM運用を進めていった。


 □実施設計で施工に親和性の高い3次元モデルを創ることで施工会社としてのノウハウ提供□


 設計と施工が分離発注される場合、一般的に施工者の選定は実施設計後に行うが、建築主の意向から基本設計後に施工者選定が行われ、竹中工務店が受注した。竹中工務店は東洋熱工業、きんでんなど各社を統括し、日建設計と共に、BIMによる実施設計を協働した。

 竹中工務店でも、全面的にBIMで実施設計を行うのは「課題がある」と捉える向きもあった。比較的、規模の小さな設計施工案件で、実施設計でのBIM運用の経験があったこと。2次元図面(データ)の整合性確保に、BIMの3次元モデルが有効性を発揮するとの確信もあり、本プロジェクトへの挑戦を決定した。

 「施工会社としてBIMで実施設計を協働するメリットは大きい。

 BIMを共有メディアとして施工部門とチームを組む中で、施工に親和性の高い高精度なレベルでのBIMモデルを作成できる。それら3次元モデルを基に各種設備BIMも統合し、プレコンストラクションを実現できる。

 東洋熱工業、きんでんなどは自社単独でもBIM運用を進めていたが、今回の設計事務所、サブコンとの実施設計から施工へ至る協働作業によってBIM運用のメリットを再確認できた」(竹中工務店東京本店設計部プロダクト部長・森元一氏)


 □3次元モデルの作成・統合での干渉チェック+2次元図面(データ)を描く統合環境構築□


 本プロジェクトで用いたシステムおよび3次元モデルの連携を示すダイヤグラム。

 「Revit Architecture」を中心にして躯体、設備それぞれに特化したツールが使われている。それらの3次元モデルを統合してチェックするのに使用するのが「Navisworks」だ。3次元モデル固有のメリットが活かせる設備の3次元干渉チェックなどに有効性を発揮する。

 次回は、施工段階でのBIM運用の実際について報告する。

 〈アーキネット・ジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)