JTBツアー/黒部宇奈月キャニオンルートが一般開放/佐藤工業社員も同伴

2026年10月9日 行事 [3面]

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 富山県の黒部峡谷を流れる黒部川で6、7日の2日間、電源開発プロジェクトの歴史をたどる「黒部宇奈月キャニオンルート」の一般開放を記念するJTBのツアーが催行された。29人の参加者が集まり、水力発電所建設に伴うトンネル工事や一般公開前の安全工事を手がけた佐藤工業の社員も参加。一行はインクラインや立坑エレベーターなどに乗り、立ち入りが制限されていたトンネル内などを巡った。
 黒部宇奈月キャニオンルートは、豊富な水量を誇る黒部川に水力発電所を開発するため、戦中から戦後にかけて造られた関西電力などの工事用通路。標高差が約900メートルある黒部峡谷鉄道欅平駅から黒部ダムまで約18キロを結ぶ。一般開放に合わせ、JTBが新たな旅行商品として1泊2日の周遊ツアーを企画。初日の6日は別の観光地や温泉旅館を訪ね、翌7日に現地を見て回った。
 富山で創業した佐藤工業は、黒部川第三発電所(黒三)工事や黒部川第四発電所(黒四)の第4工区などに深く携わった。ここ数年は本業の建設事業に加え、建設技術者の専門知識を生かしたインフラツーリズムにも注力。今回のツアーには同社インフラツーリズム研究会の岩橋公男氏らも参加し、現場を案内した。JTBのツアー企画段階にも携わり、電源開発の歴史などを説明している。
 周遊ツアーは黒部ダム、タル沢横坑、黒四、仙人谷などを経由し、欅平駅に向かうコース。専用バスで黒部トンネルを進み、途中で黒四建設でも使用した最大25トンの資材を運搬するインクラインに乗り換えた。スキージャンプ台とほぼ同じ約34度の急斜面を下り、参加者からは歓声と悲鳴が上がった。
 その後は蓄電池機関車で移動し、約200メートルの標高差を立坑エレベーターで一気に降下。発電所建設のために人員や資材を輸送し、現在も維持管理用に使われている。
 黒三工事では、岩盤の温度が160度を超え、灼熱(しゃくねつ)状態の坑内で作業員の身体を冷やすためホースで散水したという「高熱隧道(ずいどう)」も機関車で通過した。現在は40度に保たれているが、坑内は硫黄の匂いが充満し、壁面には湯の花が付着していた。一行は厳しい現場環境を今に伝える光景を目の当たりにし、世紀の大工事を成し遂げた先人の技術力やプロジェクトにかける熱い気持ちを感じた様子だった。
 佐藤工業は、一般開放前の安全工事で落盤を防ぐトンネル内の補強や緊急時の避難所を新設した。岩橋氏は「造って終わりではなく、維持管理こそが大切。ツアーではそうした部分も見てほしい」と述べた。その上で「『黒部ダムがすごい』というだけで終わってほしくない。普段、当たり前に使っているインフラにも歴史や技術、苦労が隠れている。実際に現地を巡り、そうした背景を知ってもらいたい」と語った。
 同日迎えた誕生日の記念旅行として、茨城県つくば市からツアーに参加した菊田祐さんは「古い隧道が残っていて感動した。夫婦の新たな思い出になってよかった」と笑顔を見せた。