◇大林組東北支店で受け継がれる思い
今年のお盆休みを前に、仙台市役所本庁舎整備工事の作業所で、272通の手紙が現場で働く一人一人の手に渡った。送り主は大林組・鉄建建設・仙建工業・深松組JVを束ねる星野明弘統括所長。宛先はJV職員44人、3次下請までの技能者228人。現場で働く全員に星野所長が日頃の感謝と思いを届けた。
「現場だより」と名付けたA4判フルカラーの紙面には、約800字の文章と写真を載せた。どんな工事をしているのか、家に持ち帰った家族が読んでも分かるように言葉を選ぶ。本人の顔と、働く姿が分かる写真も添える。
「必ず本人の氏名と所属会社を書く。その人自身を気にかけている、認めているというメッセージを伝えたい」
星野所長は手紙に込めた思いをそう話す。文面には日頃の働きへのねぎらいと、休暇明けへの期待を込める。海外出身の作業員には「イツモアリガトウ」と片仮名で書き添えた。
手紙を渡すのは、お盆と年末年始の長期休暇前。写真撮影も含め、準備には1週間ほどかかる。「正直、大変」と星野所長は笑う。それでも、家に持ち帰った手紙を見た家族が「喜んでくれた」と聞くと、苦労は吹き飛ぶ。
手紙がきっかけで家族との会話も生まれる。現場で働く仲間同士の距離も近くなる。「事故を防ぐことや、仕事をうまく進めることにも、必ずつながっていると思う」。星野所長はそう力を込める。
工事の進み具合は現在約6割。2028年度の供用を目指し、これから内装工事も本格化する。次の年末年始は、これまでで最も多くの手紙を書くことになりそうだ。
この取り組みの原点は30年前にさかのぼる。始めたのは、現在の鈴木直行常務執行役員東北支店長。当時、現場で働いていた鈴木支店長は、家族から何げなく「現場でどんなことをしているの?」と聞かれた。
その一言がきっかけだった。家族には見えない現場で、どんな人が、どんな仕事をしているのか。働く姿を家族に伝えたら、本人もうれしいし、家族もうれしいのではないか。そう考えた。
以来、現場が変わっても、節目ごとに手紙を書いてきた。一緒に働く仲間へ、そしてその家族へ。手紙を渡す習慣は、今も受け継がれている。
若手社員の母親から、丁寧な文字でつづられた礼状が届いたこともある。鈴木支店長は、その手紙を今も大切にしまっている。
「職人をはじめ、みんなが気持ちよく働けるように支えることも、現場監督の大事な仕事」
仲間意識が深まれば、事故も減ると感じる。ただ、そうした変化を数字だけで表すことは難しい。デジタル化が進み、現場の仕事が変わっても、人と人が言葉を交わす大切さは決して変わらない。
272通の手紙には、現場と仲間への思いが、丁寧に込められている。









