福島県のいわき市と広野町にまたがる阿武隈高地で進行している「あぶくま南風力発電所」の建設で、風車据え付け工事がラストスパートに入った。8日までに全28基中23基の組み立てが完了。青空に映える風車群が姿を現している。設計・施工を担当する関電工の久松克也所長は現在、同社が手がける全国11件の風力発電所建設工事の中で「最も難度が高いだろう」と語る。風が強まる11月を前に「10月が勝負どころだ。品質の良い発電所を一日でも早く無事故で事業者にお渡ししたい」と意気込む。
施工内容は風車の調達・輸送・据え付け、変電所の建設、自営線や集電線の設置など多岐にわたる。工期は2023年9月~27年6月。全体の進捗率は8月末時点で73・4%。10月に17基、11基の年度内引き渡しを目指している。
この工事を難しくしているのが、部材を運ぶ輸送路の長さだ。海外から部材が届く市内の小名浜港から内陸の「風車サイト」までの道のりは約100キロに及ぶ。久松所長によると、国内の風力発電所では異例の長さで、途中には輸送の支障になりそうなカーブや交差点に加え道幅が狭い箇所が数多く存在していた。工事全体を通しても「経路整備と車両選びが一番大変だった」と明かす。
ゼネラル・エレクトリック(GE)ベノルバ製の風車のサイズはローター径が103メートル、タワー部分の高さが85メートル。ブレード1枚の長さは約50メートル、タワーは1段当たり約21~24メートルにもなる巨大構造物だ。さらに発電機を格納するナセルは約83トンの重量がある。
輸送計画の策定には、日本通運グループのNXエンジニアリング(東京都千代田区、宮嵜靖夫社長)が協力。3D測量を活用し、大型車両が通過できるように険しい山道を拡幅・補強したほか、ぶつかりそうな信号機の移設や樹木の伐採などを約8年間かけて地道に進めた。土地の所有者が不明の場合は登記簿調査や地元への聞き取りを行い、一つ一つ突き止めたという。
輸送にかかる期間も異例の長さだ。一般的に「2日間でも珍しい」(久松所長)とされる中、今回は1回当たり計4日間にわたる。大型部材は6種類の特殊車両を使い分け、小名浜港から計3カ所で積み替えながら風車サイトに運び入れる。このうちブレードの運搬では、トレーラー型の「起立台車」を採用。ブレード先端の位置を電線や信号機の隙間を縫うように微調整しながら輸送する。
据え付け作業では、国内に16台しかない1200トンづり自走式クレーン2台が稼働。風車のタワー部分を4段階に分けて組み立て後、ナセルやブレードを取り付ける。作業の実施は当日の風の強さや天候を慎重に見極め判断している。
輸送・据え付け作業は、道路の使用許可が下りる深夜~早朝になる。1日当たり約100人の作業員が毎日、夜通しの工事で発電所を形づくる。久松所長は「万全の準備を整え、作業に臨んでいる」と胸を張る。
福島県は、産業創出などを目的に再生可能エネルギーの導入を推進している。あぶくま南風力発電所は、コスモエネルギーホールディングスの事業会社・コスモエコパワー(東京都品川区、野倉史章社長)ら4社によるSPC(特定目的会社)「あぶくま南風力発電」(いわき市)が発注。関電工は15年に基本設計、詳細設計を18年に受注。23年8月にEPC(設計・調達・建設)契約を結んだ。








