BIMの課題と可能性・44/樋口一希/BIMモデルのFM分野への援用・1

2014年12月4日 トップニュース

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 3次元BIMモデル(データ)の援用範囲が広がりをみせている。注目が集まっているファシリティ・マネジメント(FM)分野への援用について報告する。


 □建築費の約40%相当・ライフサイクルコスト全体の約13%の削減が可能との検証結果に注目□


 本連載の初回に大成建設と日本IBMがBIM-FM連携で行った建物のライフサイクルコスト算定の検証結果について報告した。

 検証建物は日本IBMの既存オフィスビル。2次元図面を基に大成建設がBIMソフト「Revit」(オートデスク)でBIMモデルを再構築。資産管理ソリューション「Maximo」(日本IBM)にデータを移行、同ビルの管理運用を擬似的に行い、ライフサイクルコストを算定した。

 65年間使用したと仮定すると、建築費の約40%相当、管理運用コストを含むライフサイクルコスト全体の約13%が削減可能と試算した。報告事例は建物オーナーなどを中心に注目を集めた。

 国内のソフトベンダーもBIM-FM連携へ動きを早めている。BIMソフト「GLOOBE」(福井コンピュータアーキテクト)と長期修繕計画システム「FM-Refine」(FMシステム)によるBIM-FM連携の現況を探る。


 □GLOOBE 2015が採用したMDBへの出力機能の援用で実効性を確保したFM-Refineとの連携□


 福井コンピュータアーキテクトが発表したGLOOBE 2015では、BIMモデルから建物の部位・部材や設備機器情報をMDB(マイクロソフトのAccess形式のデータベース)に出力できる機能を追加、FMでの施設維持管理情報のビジュアル化ツールとしても使用できる環境を整備した。

 同社はGLOOBEをプラットフォームとし、国産ソフトベンターを糾合するJ-BIM(日本版BIM)連携を進めているが、GLOOBEにおけるFM連携への要望に応えたのが、FMシステムのFM-Refineだ。

 発表間もないFM-Refineだが、既に建物のライフサイクルマネジメントへの対応を強めている複数の著名企業が採用し、運用を開始した。

 マンションメーカーは、長期修繕計画を前倒し的に活用しようと試行している。建設費などの初期コストと特定期間の修繕コストを合算シミュレーションすることで、リノベーションも視野に入れた戦略的な価格政策に援用するためだ。

 ※J-BIM PROJECT=http://j-bim.gloobe.jp/


 □データマイニングで設計・施工=建築の側とFMの側が必要とする建物情報をマッチング□


 BIM-FM連携を探求する中で、システム以前の課題も明らかとなった。設計・施工段階でBIMソフトによって創られたBIMモデル(データ)=建物情報と、FM段階で必要なFMモデル(データ)=建物情報が異なるため、可用性、流通性に優れたデジタルデータといえども、ダイレクトに連携できない。

 FM業務で用いる電気、空調、衛生などの設備台帳では、設計・施工時の情報に対して、耐用年数などの機器ごとの個別情報と共に、維持更新するためのメンテナンスコストなども関連付ける必要がある。

 「設計・施工=建築の側はFM側がどのような情報を必要としているのか不確定」「FMの側では設計・施工=建築の側がどのような情報を提供してくれるのかが曖昧」で、ダイレクトにシステム連携できず、従来と同様に、項目の再設定、データの再入力などの煩雑な人的作業が発生する。

 それらの課題を軽減するためにGLOOBEとFM-RefineによるBIM-FM連携が採用したのが、最先端のデータマイニング技術だ。どのようにして実際にBIM-FM連携するのかを次回、報告する。

 ※データマイニング(Data mining)=直訳すると、データを掘り出すこと。データの巨大集合やデータベースから(FM業務に)有用な情報を抽出し、整理すること。

 〈アーキネット・ジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)