BIMの課題と可能性・46/樋口一希/BIMモデルのFM分野への援用・3

2014年12月18日 トップニュース

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 BIM-FM連携では、狭義のBIM=3次元設計・モデリングツールとしてよりも、3次元の建物モデルに属性を付加し、設計・施工から竣工後の施設管理まで援用する広義のBIM=データベースとしての役割が求められる。BIMソフト「GLOOBE」と長期修繕計画システム「FM-Refine」の事例に則して報告する。


 □BIMソフト「GLOOBE 2016」に追加した新機能によってFMソフトとのデータ連携を実行□


 来夏リリース予定のGLOOBE 2016の開発責任者にBIM-FM連携を中心にヒアリングする機会を得た。開発途上のため掲載困難となったが、BIM-FM連携の主要画面を基に、GLOOBE 2016の「革新性」を再現する。秘匿性の高い情報を含むため解説を省略、抽象化するとともに、必ずしも製品化に反映されるものでないことを明記する。

 GLOOBE 2016の画面に、外装、内装、電気設備などの建築=BIM側の部位がグループ一覧として表示される。内装(壁)を選択し、〔FM連携〕ボタンを押すと、BIM-FM連携が起動、画面が遷移し、選択した部位=内装(壁)部分をハイライト表示した3次元モデルが現れる。

 BIM-FM連携の具体的な内容が属性データの組み合わせ表としても表示されている。建築=BIM側の部材は、種別:内壁仕上げ、名称:ビニルクロスなどであり、FM側では大分類、中分類、小分類と空欄が設けられている。

 この内装(壁)のデータはFM-Refineに引き渡され、マイニング技術(手動でも可)を用いて大分類、中分類、小分類ごとに情報が付与され、双方の紐付けも行われる。


 □部位を選択してBIM-FM連携を行うとともに3次元モデルでの「見える化」でFM精度も向上□


 GLOOBE 2016では、特殊な中間ファイルは用いず、BIMモデルから建物の部位部材や設備機器情報をMDB(マイクロソフトのAccess形式のデータベース)に出力するので、FM-Refineとの親和性が高い。
データを受け取ったFM=FM-Refine側で大分類、中分類、小分類に情報を付与し、再度、GLOOBE 2016に戻す(インポート)と、建築=BIM側の部位とFM=FM-Refine側の情報の紐付けが完了する。

 特筆できるのは、選択した部位を3次元モデル上でハイライト表示してBIM-FM連携を「見える化」し、作業精度を向上させることだ。一般的な利用方法ではないが、FM=FM-Refine側で変更したデータをGLOOBE 2016へ戻せば3次元モデルも変更可能だ。

 これら高度な連携機能は、BIMとFM双方の属性データと紐付け可能なユニークIDを生成するBIMソフト「GLOOBE」のデータベース設計に依拠している。

 BIM-FM連携での「見える化」の可能性を近未来へ普遍してみる。施設管理者に、ある部屋の空調がおかしいとメールが届く。管理画面で調べると、ここ数日間は平均温度が高く推移している。3次元モデル上で、その部屋の空調機器をクリックすると、関連する全設備機器がハイライトされる。それによって故障箇所が特定でき、FMシステムと連動して、迅速かつ正確な保守管理が実現する。

 BIMモデル(データ)は、設計・施工から竣工後の施設管理まで援用範囲を広げ始めた。今後は、日々、活動している建物への動的な援用にもつながるに違いない。


 □BIMソフトユーザー、業界関係者の中で急速に顕在化しつつあるBIM-FM連携への実現要請□


 複数の建物を保有し、管理・運営を行っている不動産業、デベロッパーの中でBIM運用の進展とともに、FM業務とのシステム連携を模索する動きが顕在化しつつある。

 設計事務所、建設会社、サブコン、設備メーカーもBIM運用の射程距離をFMまで伸ばし、新たなビジネスチャンスを探っている。

 福井コンピュータアーキテクトとFMシステムが、BIM-FM連携への協働作業を開始した背景には、ユーザー、業界関係者からの要請があった。

 〈アーキネット・ジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)