BIMの課題と可能性・51/樋口一希/鹿島の「Global BIM」・3

2015年1月29日 トップニュース

文字サイズ

 鹿島の「Global BIM」を三位一体となって支えるチームワーク機能を持つBIMソフト、BIMモデル(データ)の構築・活用フロー、新しい職能としてのBIM推進グループについて報告する。


 □BIMソフトのチームワーク機能でオブジェクト単位=差分データの分散加工・編集を実践□


 BIMソフト(ArchiCAD)は、複数の設計者などが協働できるチームワーク(ネットワーク)機能を持つ。サーバー上のBIMモデル(データ)はオブジェクトを最小単位として排他処理を設定し、分散加工、編集できる。

 例えば、チャット機能を使って、オブジェクトを「確保」している担当者に「解放」を依頼する。了解メッセージと共に、オブジェクトの編集権限へ移行する。円滑な編集作業が可能なのは、サーバーとクライアントの間で差分データをやりとりしているからだ。

 ArchiCAD17までは、小規模のチームワーク作業を想定した無償BIMサーバー管理ソフトでの運用であったが、グラフィソフトジャパンの最新版ArchiCAD18と機能強化されたサーバー管理ソフトBIMcloudで本格的に大規模クラウドサービスへと移行する。


 □設計段階で作成されるBIMデータを再定義+海外でもモデル化可能な基本モデル採用□


 BIMデータの構築・活用フローの最初に位置するのが『基本モデル』だ。

 基本モデルとは、見積図や実施設計図などから作成されるBIMデータで、後に活用目的に合わせ、フレキシブルに情報を追加できるよう、最初の入力情報は必要最小限に抑えられる。この基本モデルは、主にフィリピン、インド、韓国など海外の外注モデリング会社によってBIMデータ化される。

 図「BIMの標準的な活用フロー」。チームワーク機能を活かして専門工事業者や外注の施工図事務所と協働するなど、基本モデルは、目的に応じて再加工され、詳細度の高いBIMモデルとして施工現場へと至る。


 □従来業務をGlobal BIMへと有機的に再編成 新しい職能としてのBIMマネージャーの存在□


 「Global BIM」の運用全般をサポートするのが新しい職能としてのBIMマネージャーだ。デジタル情報の整理整頓やチームワークでの協働作業を管理し、従来業務をネットワーク型の有機的な連携へと再編成する。

 ・BIMマネージャー=各部署、支店のBIM推進担当者も兼務。モデル詳細度、データ構成の立案、ユーザー管理、チームワーク協業管理、モデリング作業管理を行う。

 ・オペレーター=BIM活用当事者(設計・施工現場・外注)。従来のオペレーターではなく、建築的・技術的知見を持ちながら、モデリング作業をする実務者。

 ・ビューワー=モデル閲覧者。直接モデリング作業を行わず、閲覧中心の顧客+設計+協力会社など。モデリング作業管理を行う現場所長、工務課長なども含む。

 「最上位には、サーバー内の全プロジェクト、ユーザー、役割、ライブラリなどのシステム全体の管理権限を持つシステム管理者が存在する。本社BIM推進グループから統括BIMマネージャーと複数のIT担当者が担当している」(鹿島建築管理本部建築技術部BIM推進グループ長・BIM統括マネージャー・安井好広氏)

 〈アーキネット・ジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)