BIMの課題と可能性・78/樋口一希/日本設計とオートデスクの次世代BIM

2015年8月20日 トップニュース

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 日本設計とオートデスク社は、14年9月に次世代BIMの実現を目指して締結したパートナーシップの1年間の成果とともに、今後の活動方針を公表した。BIM推進のより一層の指標となる、いくつかの要諦について概説する。


 □BIMの3次元建物モデル=〔形状〕とデジタル化された建物〔情報〕を融合して設計を支援□


 日本設計では、BIMの『I』=Informationの徹底活用が最重要とし、BIMワークフローの構築による「Integrated BIM」を推進してきた。

 それらの経過を経て、BIMソフト「Revit」(オートデスク社製)を基盤にした共通プラットフォームの整備と設計ワークフローの体系化による設計情報の標準化にチャレンジしている。


 ▽日本版「Revit MEP」の更なる強化に向けて協働


 BIMソフト「Revit」では、意匠設計用「Revit Architecture」、構造設計用「Revit Structure」とともに設備設計用「Revit MEP※」が提供されているが、両社は3次元建物モデルが内包する『I』=Informationの徹底活用を目指して、特に「Revit MEP」の強化に向けて協働体制を構築した。

 具体的には、BIMソフト「Revit」を共通のプラットフォームとして意匠、構造、設備の3次元建物モデルを統合する際に、その背後にある『I』=Informationが最も有効利用できる工程はMEPだと見定めたからだ。ここでも3次元建物モデル=形状(形態)と合わせて『I』=Information=情報を最重要視する戦略が垣間見られる。

 設備の3次元建物モデル=形状(形態)による「見える化」=干渉チェックとともに、『I』=Information=機器情報・部材情報などを援用することで、設備設計に関わる各種計算書や2次元図面(データ)を正確かつ効率的に生成できる。

 日本設計では、これら3次元建物モデルが内包する『I』=Informationをファシリティーマネジメントへと接続し、ライフサイクルコストの最適化提案にも援用していく。

 ※MEP=Mechanical(機械)・Electrical(電気)・Plumbing(配管)の略。


 ▽『I』=Informationを活かした作図方法の革新


 建築工程の中を2次元の図面(データ)が流通している以上、BIMの3次元建物モデルから、いかにして2次元の図面(データ)を生成するのかは各社各様の課題だ。日本設計ではBIMの『I』=Informationを徹底活用し、実利面も重視して作図方法の革新に着手した。

 一例として図示した図面は仕上げ表のケース。従来の表形式の仕上げ表を3次元モデルが内包する『I』=Informationの集約と参照により、色分け表現へと自動化展開している。詳細な室情報などの『I』=Informationを活用して、早期の概算システムとの連動にも着手した。

 行政対応、他工程間での承認など、既存図面への偏重が続く中で、BIM推進の要諦として作図方法の革新に挑戦した日本設計の試みは注目に値する。


 ▽Dynamoを用いた3Dと『I』=Informationの融合


 Dynamoは、Revitのアドインとして稼働するコンピューテイショナル・デザインのためのプログラミング環境・ツール。日本設計では、形態決定と合わせて環境シミュレーションなどと組み合わせて運用している。

 例示されたのは開口部+ルーバーの写真。シミュレーションソフトで環境解析し、そこで生成された数値をDynamoでパラメトリックに変更、最適なルーバーを設計するものだ。

 この事例のように、建築物では「環境が最適形態を決定する」領域が多々ある。ここでも3次元建物モデルと『I』=Informationとの新たな関係をいかに規定するのかが要諦となっている。

 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)