BIMの課題と可能性・2/樋口一希/コスト削減効果定量化の試み・1

2014年1月30日 トップニュース

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 大成建設と日本IBMがBIM(FM連携)を用いて行った建物のライフサイクル・コスト算定の検証結果について報告する。コスト削減効果の定量化が実現するなど、大きな成果を上げている。


 □BIMとFMの連携によって建物のライフサイクル・コスト削減の可能性を実証□

 検証対象のビルは、大阪市西区に建つ日本IBMのオフィスビルで、竣工は1974年。S・SRC造地下4階地上12階(塔屋3階)建て延べ床面積約2万1000平方メートル。

 大成建設が「紙」の2次元図面を基に、オートデスクのBIMソフト「Revit」を用いて、コンピュータ上に3次元データを再構築する作業からスタートした。次に中間的なシステムを用いて、日本IBMの資産管理ソリューション「Maximo」にデータを移行、FMに必須の設備台帳を作成、それらを通して、同ビルの管理運用を擬似的に行い、ライフサイクル・コストを算定した。※システム構成を含む、同作業の詳細は次回報告する。


 □65年間に及ぶ建物のライフサイクル・コストの約13%が削減可能と試算□

 結果は、注目に値するものだ。同ビルを65年間使用すると仮定する中で、BIMとFMのシステム連携によって施設の管理運用を行うと、水面上の氷山の一角=初期の建築費の約40%相当、水面下の管理運用コストを含む、ライフサイクル・コスト全体の約13%が削減可能と試算できた=図参照。

 作業面では、FMに用いる設備台帳の作成、管理コストを大幅に削減できた。

 BIMで構築する建物の3次元データには、建物本体の躯体データだけでなく、属性データも付与した設備機器なども含む。従来は2次元の図面から人為的な作業で設備機器を拾い出し、設備台帳を作成していたが、RevitとMaximoのBIM・FMシステム連携によって工数削減効果があるのが実証できた。

 「BIMはFMとの連携によって威力を発揮する。BIMを高度なFMシステムとしても使用することで、建設業としてFM分野で新たなビジネスチャンスを追求できる可能性がある」(猪里孝司大成建設設計本部専門技術部まちづくり・建築計画室長)。


 □設備機器の延命効果などで建物の品質向上も可能□

 建物本体の管理運用コスト削減については、より具体的な想定シナリオを作り、そのストーリーに基づき検証した。

 メーカー側の推奨値では10年後の更新計画が立案されていた設備機器のケース。BIM・FMシステム側でも10年後の更新とのデータを保持していたが、使用実績値と比較して事前の更新が可能とのシナリオを仮定し、試算した。8年経過時の運転時間が約3万時間と仮定した結果、スペックとも照合して、4年は延長して利用可能と推認できた。

 このように、BIM・FM連携により、設備機器の更新計画を常に刷新することで、延命効果が期待できる。

 「ソリューション・ベンダーとしての日本IBMと大成建設が業態の垣根を越えてノウハウを共有、コラボレーションし、ライフサイクル・コストの削減が実証できたことを受けて今後のBIM普及にも積極的につなげていきたい」(屋代敏之日本アイ・ビー・エムスマーター・シティ事業ビジネス開発部部長)。

 (毎週木曜日掲載)