BIMの課題と可能性・3/樋口一希/コスト削減効果定量化の試み・2

2014年2月6日 トップニュース

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 大成建設と日本IBMが行ったBIM・FM連携による建物のライフサイクル・コストの検証結果について前稿で俯瞰(ふかん)した。ここでは、検証結果を得るために用いたシステム構成と作業内容について報告する。


 □39年間保存していた2次元図面を基に対象建物を3次元データでデジタル空間に「新築」□

 2次元の図面を基にオートデスクのBIMソフト「Revit」で対象建物の躯体から各種設備までを3次元データで再現・作成した。コンピュータのデジタル空間上に、対象建物を再度、新築したことになる。

 対象建物は日本IBMの所有物件であり、同社はファシリティマネジャーによる施設管理を行っている。竣工時の図面(実施設計図面・竣工図)および39年間の更新履歴とその情報(設計情報を含む)を全て保持していたので、データが揃(そろ)っているとの観点から検証対象の建物として適していると判断した。


 □FMに用いる属性データを分類・管理する機能も包括した中間ファイル「COBie」を採用□

 Revit上に再現・作成した建物の3次元データをCOBieファイル形式でエクスポートする。

 COBieはデータ移行用の単なる中間ファイルではない。設計(意匠・設備)、施工、竣工と区分けした工程ごとに、FMに用いる属性データを管理するためのシートが設定されており、それらのシート+属性データを資産管理ソリューション「Maximo」に受け渡し、データベース構築できる。この一連のシステム連携作業によって、設備台帳の作成時間の大幅な短縮が可能となる。

 一例として、設計分類のシート「Space」は各部屋の情報(室名、面積、IDなど)、設備分類のシート「Type」は設備および部品の製品情報である。


 □「見える化」+データベース運用で利用価値がより高まるFM用の3次元属性データ□

 建物を3次元データ化するメリットとして「見える化」効果がある。本プロジェクトでは「見える化」のために、Revitと親和性が高いオートデスクのAutodesk Navisworksを採用した。

 これによってMaximo上でBIMデータを「見える化」=属性と形状の連携+視認しながら、3次元で設備機器などの干渉チェックなども可能となる。両システムの連携によって、Navisworks画面で視認しながら変更を加えると、Maximo側のデータベースも更新できる。


 □BIM・FM連携の課題と追求するべき可能性□

 プロジェクト期間を3カ月と設定し、序盤でBIMデータの作成、中盤でMaximoとの連携、終盤で効果の検討を行った。大成建設からはRevitに精通した設計および技術開発部門のスタッフ3名、日本IBMからはプロジェクト全体の進捗(しんちょく)管理と成果物を取りまとめるプロジェクトマネージャー、Maximoのエンジニア、効果の検討を担当したコンサルタント、スマートビルディング担当のアドバイザーなど5名が参加した。作業が円滑に進行したかという課題も浮き彫りとなった。

 次回は、明らかとなった課題とそれでもBIM・FM連携を推進するべく事由を報告する。


 ※COBie=Construction Operations Building Information Exchange。米国建築科学研究所が中心となり、設計・施工段階のBIM情報をFMに受け渡すことを目的に開発したExcelベースのデータ交換用標準フォーマット。

 〈アーキネットジャパン事務局〉