BIMの課題と可能性・101/樋口一希/日本設計のIntegrated BIM・1

2016年2月18日 トップニュース

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 15年8月25日付で紹介した日本設計の「Integrated BIM」と日本版「Revit MEP」。オートデスク製品ユーザーのためのカンファレンス「Autodesk University Las Vegas 2015」で注目を集めた「Integrated BIM」の進展状況について報告する。


 □設備設計へのBIM運用に最適なDynamoを用いた3次元モデルと『I』=Informationの融合□


 日本設計は、12月1日に「Automating MEP design using Dynamo(邦題:Dynamoによる設備設計の変革)」について講演した。講演資料に「MEP design utilizing “Information”(New in Japan)」とあるように、「Integrated BIM」は、3次元の建物モデルと同列に、(設備設計のようなフェーズでは)それ以上に、BIMの『I』=Information=情報を最重要視する。

 BIMソフト「Revit(オートデスク社製)」のアドインツールとして稼働するDynamoでは、大元の形態(3次元モデル)が有する『I』=Information=情報をパラメトリックに偏位させることで、派生的な形態(3次元モデル)を自動的に生成できる。

 ルーバーの事例。環境解析の数値をDynamoでパラメトリックに偏位、大元の形態(3次元モデル)から最適なルーバーを設計する。このように、建築物では「環境(『I』=Information=情報)が形態を決定する」領域が数多く存在する。

 「Revit MEPの進化系としてのDynamoの設備設計への援用は海外でも試行錯誤の段階にあり、日本設計の設備BIMは最先端に位置づけられていると再認識できた」(環境・設備設計群3Dデジタルソリューション室主管・吉原和正氏)。


 □BIMによる革新が設計組織だけでなく建築主をも巻き込んだIFoA契約へと進展する可能性□


 福井コンピュータアーキテクトのBIMセミナーでの講演「BIMの課題と可能性」(11月18日)。筆者は米国事情として、建築主(オーナー)が設計事務所、ゼネコン、サブコンを糾合し締結するBIMによるIFoA(Integrated Form of Agreement)=4者間契約※について紹介した。

 BIMソフト「Revit」を基盤に共通プラットフォームを整備し、設計ワークフローを革新する日本設計の「Integrated BIM」は、設計組織だけでなく、建築主からゼネコン、サブコンなどを巻き込み、契約関係を含む新たなBIMワークフローの構築へと進展する可能性を持つ。

 講演後、名刺交換した圓谷彩永子氏(日本設計プロジェクト管理部3Dデジタルソリューション室)が語った「IFoAの重要性に着目して内外の情報を収集し研究を続けている」を契機に、「Integrated BIM」の進展具合を探るべく再訪した。


 □カンファレンス帰国後も続く「業としての建築」の革新に向けた切迫感溢れる熱い議論□


 12月3日、日本設計は、「Dynamoの設備設計への援用」をテーマとした設備BIMの取り組みをオンライン中継しディスカッションする「EP customer dedicated session」に参加した。セッションで交わされた「業としての建築」をBIMによっていかに革新するのかの「切迫感溢れる熱い議論」(3Dデジタルソリューション室長・岩村雅人氏)は、日本設計とパートナーシップを結んだオートデスク本社(米国)の協力のもと、帰国後も続いている。

 図は、1864年創設の建設会社であるMcCarthy Building Companies,Inc.(本社セントルイス)から、契約関係に関するメールで添付提供されたもの。日本設計では、BIMによる協働を睨みつつ、米国をはじめとする海外企業と積極的に情報交換を行っている。

 ※IFoA(Integrated Form of Agreement)=4者間契約:連載第96回「2016年の『業としての建築』を展望」(https://www.decn.co.jp/?p=57114)参照。

 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)