BIMの課題と可能性・107/樋口一希/鹿島のGlobal BIMの深化形・2

2016年3月31日 トップニュース

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 鹿島のBIM運用の続編として、追加提供された資料に基づき「Global BIMの深化形」の現在について報告する。


 □クラウドサーバー「Global BIM 2.0」の運用で国内外の協力組織でBIMモデル+施工図作成□


 鹿島では、高度なセキュリティを備えたクラウドサーバーによるプラットフォーム「Global BIM 2.0」を運用している。

 BIMママの在宅勤務も実現した「Global BIM 2.0」+「ArchiCAD」(グラフィソフト社製)は、Aidea(設計会社兼BIMコンサルタント:フィリピン)、HCLジャパン・インド(BPO)、Doalltech(グラフィソフト・コリア:韓国)、鹿島クレス、鹿島沖縄BIMセンターとのネットワークを介したBIMモデルや施工図作成の協働体制を可能にしている。BIMママを含む、内外の関係者間のBIM協働を支える「BIM進捗(しんちょく)管理システム」について検証する。


 □コミュニケーション・メディアとしての「BIM進捗管理システム」を共同開発+運用□


 BIMソフト「ArchiCAD」は、チームワーク(ネットワーク)機能を標準装備、サーバー上のBIMモデル=オブジェクトを最小単位として分散加工、編集できる。オブジェクトへの排他処理の「保持」「解放」をやり取りできるなど、チャット機能も使い勝手は良いが、鹿島では、ネットワーク機能を深化するべくDoalltech(グラフィソフト・コリア:韓国)と共同で「BIM進捗管理システム」の開発を続け、本日(3月31日)付で連携強化のためDoalltechに資本参加した。

 BIMモデルの加工、修正指示は、当初、BIMモデル=オブジェクトとは切り離され、テキストファイルでやり取りされていたため、すり合わせ確認に時間を要し、人為的ミス発生の余地もあった。最新版では、BIMモデル=オブジェクト上に指示内容をポップアップ表示させ、専用のウェブページで一覧表示できるなど作業環境を格段に向上させている。プラットフォーム「Global BIM 2.0」+BIMソフト「ArchiCAD」は、BIM運用に特化したコミュニケーション・メディアへと深化した。

 鹿島では、「BIM進捗管理システム」の日本語化などを進め、外販準備を開始、外部協力組織のBIM導入コスト軽減のため、特定プロジェクトへの参加期間だけクライアントごとにBIMソフトのライセンスを供与するBTC(BIMcloud Team client)環境も提供している。自らの知見やノウハウを積極的に開いていく鹿島の取り組みは、業界のBIM推進に貢献するとともに、buildingSMART

 Internationalからの招聘にあるように、海外からも高い評価を受けている。


 □製造業と異なり設計モデルがそのまま施工に直結しにくい現状の建設業の課題を解決する□


 今回提供を受けたBIMモデル作成の関連資料(図)「Modeling Order(BIMモデリング指示書)」により、いかにして工程の進捗に合わせてBIMモデルに情報を追加し、デジタル空間上に、実際に建物を建てるかのようにBIMモデルを作成するのかを概説する。

 主たるBIMモデル(Main purpose of use of models)は、LOD(Level Of Detail:Development)の段階的な更新に合わせて用意されたモデル作成手法に追随して成長していく。その際に重要なのは、LODの更新に合わせてBIMモデルの詳細度を更新するだけでなく、LODの段階に合わせて納まり(How to joint”PC”parts:How to set”interior”wall)までもが更新できることだ。

 設計施工比率が過半を上回り、増加傾向にある鹿島でも、他社設計への対応は必須だ。「Global BIMの深化形」が優れているのは、これら相反、混在する現状にフレキシブルに対応できることだ。具体的には『設計BIMモデル』の受け入れ体制を先行して整備しつつ、実施設計図など現況での設計情報を基に、施工BIMの『基本モデル』を内外の協力組織などで作成し、従来手法を凌駕(りょうが)する速度と正確さで、「(リアルな)納まり」もデジタルで再現、網羅した施工BIMモデルを実現している。

 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)