BIMの課題と可能性・109/樋口一希/シンプルBIM「i-ARM」

2016年4月14日 トップニュース

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 建築ピボット(構造システム・グループ)がシンプルBIMを標榜し、15年11月にリリースしたBIM「i-ARM」について報告する。


 □企画基本設計での設計者+他分野連携のプラットフォームのために開発されたBIMソフト□


 BIM「i-ARM」は、企画基本設計を担う設計者のために開発されたもので、コンセプトはi(Integrated information and intelligence)ARM(Architectural Modeling Platform)として明示されている。

 3次元建物モデルは、工程進捗に合わせたLOD(Level Of Detail:Development)の段階的な更新とともに、〔形態情報:Modeling〕+〔属性情報:I=Information〕が高度化する。そのようにBIM運用は工程全般にわたるが、BIM「i-ARM」は、企画基本設計段階で、設計者が軽やかに、シンプルな3次元建物モデルを構築(設計)し、他分野のソフトとの連携を進めるためのプラットフォームとして特化したものだ。


 □シンプルな建物モデルの構築+2次元図面生成に適したユーザー・インターフェース採用□


 BIM「i-ARM」では、3次元建物モデルと連動する2次元図面(画面)を通じて建物モデルを操作する手法と、3次元モデラー「SketchUp」のように、建物モデル自体を直接、操作する手法を併用したユーザー・インターフェースを採用している。この手法は、BIMごとに細部は異なるにしろ、現状では3次元建物モデル構築(設計)に適したものだ。

 このように、BIMのユーザー・インターフェースには、建物モデルの〔形態情報:Modeling〕と〔属性情報:I=Information〕を工程の進捗に合わせて整合する機能が求められる。


 □建物モデルから必要とする各種図面を生成するタイミングも見計らい2次元CADとも連携□


 設計者は〔形態情報:Modeling〕を構築(設計)する際に、形態に付属する〔属性情報:I=Information〕も入力しているが、寸法標記のような2次元図面特有の表現の一部は、建物モデルを参照してBIMソフト側で独自に生成している。BIM「i-ARM」では、3次元建物モデルから建築確認申請フェーズの各種図面を生成するとともに、2次元図面編集機能で追加的な注釈などの描き入れが可能だ。

 その際には、設計者として必要とする2次元図面を、3次元建物モデルのどの段階で生成するのかのタイミングを見計らうのが重要となるし、平・立・断面図間の整合確認のタイミングで、ネイティブファイル形式でダイレクト連携する2次元CAD「DRA-CAD」に渡し、さらに図面精度を上げてもよい。


 □自社ソフトとのダイレクト連携と可用性の高い属性情報の優位性を活かすBIM運用が可能□


 BIM「i-ARM」は企画設計ではビジュアル・プレゼンテーション、日影・天空率・斜線・日射量などの法規チェック、省エネ計算などに援用でき、基本設計では意匠、環境、構造など他分野のソフトとの連携を可能にしている=図参照(出典:「BIM・JAPAN Vol.1」〈エクスナレッジムック〉)。

 他社ソフトとの連携では、IFCやST-Bridge(今夏対応予定)、STLなどの中間ファイルを用いるが、自社ソフトの「DRA-CAD」「LAB-SS」「SAVE-建築」とはダイレクト連携を可能にし、グループ会社製品の「BUS-5(一貫構造計算)」でもダイレクト連携を視野に入れているのがBIM「i-ARM」の優位性だ。

 さらに〔形態情報:Modeling〕と〔属性情報:I=Information〕との固有なリレーションは確保しつつ、〔属性情報:I=Information〕には、単独でも運用できる高い可用性を付与しているため、工程の最下流に位置する施設管理などでの〔I=Information〕の援用までを目指す。

 シンプルBIMを標榜しつつ、氏育ちの良い建物3次元モデルを作成できるBIM「i-ARM」の今後の展開に注目していきたい。

 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)